消費税率10%と軽減税率導入で大混乱になると思う3つの理由


2013年度税制改正大綱で、2015年10月に消費税率を10%にする段階で、「軽減税率の導入」を目指すことが明記されました。

と書くと、なにやらおカタイ話題のようなので、簡単にまとめます。

軽減税率とは、生活必需品など一部の例外に限って通常の消費税率より低い税率を適用させることで、ヨーロッパ諸国などでは食料品や新聞などでは、この軽減税率が設定されている国があります。

消費税国際比較



※この表は産経ニュースからお借りしました。

日本では累進課税制度が課せられているので、収入があがれば税金の負担額が重くなる仕組みですが、税率が固定されている消費税の場合は、これが逆になります。収入の低い人の負担割合の方が、収入の高い人より増えるのです。

例えば消費税が10万円増えるとします。年収1000万円の家計だったら1%の負担増ですが、年収500万円の家計だったら2%の負担増です。

このように、消費税が一律で増税になると相対的に低所得者層の税負担が重くなります。この対策として「生活必需品などに課せられる税率を軽くすることで、低所得者の生活を守ろう」というのが軽減税率導入のねらいです。

いっけん、もっともな対策のように思えます。しかしこれ、調べてみればみるほど、大混乱を招く(たぶん)うえに、誰トクなのかよく分からない仕組みです。以下、懸念点を3つあげます。

1.どこで線を引くかが異常に難しい

フランスではマーガリンやキャビアが標準税率で、バターやフォアグラが軽減税率だそうです。

日本で軽減税率を導入するとなれば、どうなるでしょう。

コメは生活必需品ですから、軽減税率でしょうか?でも、ひと言でコメといっても、10キロで1万円以上する魚沼産のブランド米もあれば、その1/5程度で買えるお米もあります。マグロはどうでしょう。大間産の大トロといえば高級食材の代名詞ですが、同じマグロでもスーパーで安く買える赤身もありますよね。

これと同じような線引きが、ありとあらゆるもので求められます。現実的に考えて、合理的な線引きはとても難しいように思えます。

2.軽減税率への対応が値上がりを招く?

軽減税率が適用されている国では、ファストフードなどでの店内飲食は標準税率で、持ち帰りは軽減税率だといいます。

マクドナルドに行って、店内で食べたら消費税10%だけれども、持ち帰りだと消費税5%ということが起こりうるということですね。

もしこんな仕組みになったら、外食産業は大変なシステム投資を余儀なくされます。レジなどの決済システムなど、企業内のITシステムを全て軽減税率に対応させないといけません。

また仮にですが、トマトが軽減税率でピクルスが標準税率となったら、トマトの仕入原価には軽減税率を乗せて、ピクルスの仕入原価には標準税率を乗せる必要があります。これに対応できる事務システムに変えなければなりません。

医療サービスはどうでしょう。医療費は非課税ですが、病院が仕入れる薬や機材などには消費税が掛かっています。つまり、消費税増税になるとその差分、病院は持ち出しになります。それでは病院経営は大変困ってしまいますね。最悪の場合、診療報酬の引き上げ(実質的な値上げ)ということになるかもしれません。医療費や薬代に軽減税率をどう適用するか、非常に難しい問題のように思えます。

このように、軽減税率の適用によって企業などは膨大な負担を迫られる可能性が高いと思います。そのコストは一体だれが負担するのでしょう?体力のある大企業はともかく、中小企業ではコストを小売価格に転嫁せざるを得ないケースもあるかもしれません。

3.税収減るから本末転倒

日本で仮に標準税率10%の段階で食料品を5%の軽減税率にした場合、2.5兆円から3兆円超の税収が失われるとの試算があります。これは、消費税収の約1%分です。

そもそも、「社会保障制度の維持のため」という名目で消費税率を10%に上げた訳ですから、税収が減るなら社会保障に掛ける支出を一部減らすか、もっと税率を上げるか、のどちらかしかありません。

財務省の試算では、もし食料品全体に5%の軽減税率を適用すると、消費税10%で入るはずの税収を確保しようとすれば、その他の物品の消費税率を12.5%にしなければ税収は確保できないそうです。軽減税率を導入してしまうと、食料品以外のものを買おうとすると10%より高い消費税率を支払わなければならなくなるということです。

これ以外にも、考えなければいけないことは山ほどありそうです。

地方在住の方からすると、自動車がない生活は考えられませんが、自動車は軽減税率対象にするのか。ガソリンは?はたまた雑誌や新聞は?公共料金は?住宅は?

消費税は他の税と違い、ほぼ全ての商取引に関係してくるので、これと同様の事が、ありとあらゆる業界で起きることになりそうです。

ただでさえ、消費税率10%で売り上げの減少が予想されるなか、軽減税率が適用されるかされないかで、その業界全体の売り上げは全く変わってくるでしょう。・・・想像しただけで、もの凄い利権の奪い合いになりそうです。財務官僚の天下りが爆増するのではないでしょうか。

軽減税率って、一体誰のために必要なのか?所得税額控除の拡充じゃダメなのか?

そんな風に思います。軽減税率の導入に向けた議論は、今後、要注目です。

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