「相続税100%」になったらどうなるか?


日本の個人総資産1500兆円のうち、およそ6割は60歳以上の世代が持っているといいます。この事実についてよく言われるのが、

  • ・お金の使い道が少ない高齢者が個人資産の多くを持っているのは問題。
  • ・だから、若い世代に資産が再分配される仕組みを作るべきだ。
ということです。これにまったく異論はありませんが、どうやって資産を再分配するか?というところで仕組みが必要です。で、いまの政治の方向性によると、今後、贈与税、相続税は大増税の方針というエントリーを書きましたが、東洋経済に掲載された記事で、経済評論家で医師の和田秀樹氏による相続税100%でもいいという、何ともスゴイ主張があったので紹介します。

日本復活のために、相続税100%でもいい
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130120-00012480-toyo-bus_all&p=1

相続税は死んだら(=相続が発生したら)必ず掛かる税金ですから、すべての国民に対して課せられる税金といえます。しかし、控除額が5000万円以上と大きいため、実際に納税することになるのは課税対象のうちの4%程度。25人に1人です。実際に相続税を払うのは、控除額を超える相続財産を持っていた、本当のお金持ちであるということですね。

そして相続税の税収はいくらでしょうか?実は1兆4,300億円で、一般会計のうち1.6%に過ぎません。なぜかというと実際に払っている人が少ないことに加え、人が死なないと課税されないため、所得税や消費税と比べると、非常に少ないのです。

一般会計税収




出典:財務省

「消費税5%が8%になる」というのは大きなニュースになりましたが、相続税の増税についてはあまり大きなニュースになりません。なぜか?といえば「お金持ちにしか関係のない話しで、庶民からすると他人事(むしろ、もっと取れ!という感じ)」といったところでしょうか。

さて、もしも相続税100%となったとき、いったいどうなるでしょう。老人の資産が市場に全部流れてきて、現役世代はみんなハッピーになるでしょうか?以下、相続税100%の世界です。

マイホームは差し押さえ、財産も全て没収

相続は、どこに住んでようが資産をどれくらい持っていようが関係なく、死んだら必ず発生します。
不動産、株、現金など、持っている資産すべてを合算して相続財産を計算します。妻、子ども2人の家庭の場合、5000万円の基礎控除+1000万円×3人=8000万円が非課税となります。非課税枠がなくなって相続税100%になった場合、家の名義人が死んだらその時点で、家は没収です。一家は路頭に迷うことになります。

海外脱出者が激増

国際的には、相続税はほとんどの国が廃止に向かっています。アジアでは香港、マレーシア、タイ、インドネシアなどの国には、相続税がありません。イギリスやフランスなども相続税廃止に向かっています。そのような中、相続税100%となったらどうなるでしょう?経済的に余力がある人は、大挙して海外に脱出するでしょう。結果的には金持ちばかりが減って税収も激減です。経済、社会インフラなどはボロボロになることが推測されます。

農業・漁業・畜産業は壊滅

「不動産を含めて税率100%」ということは、宅地も山林も農業用地も関係なく物納徴税されるということでもあります。広大な農地を持つ地主さんが亡くなった場合、残った田んぼや畑はただちにお取り上げです。漁船や牛舎なども物納徴税の対象になるでしょう。

中小企業は廃業するしかない

次の世代への事業承継は、中小企業に取って大きな課題です。いちばん問題になるのは自社株の評価、および移譲になりますが、自社株というのは会社の持ちものではなく、個人の資産です。相続税100%の世界で社長が自社株をすべて保有していた場合、株の評価が高ければ相続税の評価額は数億から数十億円にもなる場合が考えられます。そのお金が払えないのであれば、廃業するしかありません。

株や不動産などの見える資産がまったく売れなくなる

死んだら国に取り上げられるのだから、当たり前ですね。不動産市場は大暴落で海外法人が買い占めていく。証券会社は倒産。それに代わって、金などの隠せる資産の価値が上がるでしょう。

結論:相続税100%は議論に値しない幻想

国家が国民から100%搾取するようなことは、いわば財産権の否定です。財産権を否定するということは、共産主義になるということです。リスクを取って稼いでも、最終的には国が100%持っていくというのでは、いったい誰が頑張って働こうと思うでしょうか。

資産の移転や、税収アップを本気でやりたいのだったらむしろ、税金は下げた方がいいと思います。それも数%下げるのではなく、圧倒的に下げる。贈与税、1年限定で一律10%」という政策をやってみたらどうでしょう。きっと生前相続が爆増して、一気に若い世代への資産移転が進み、消費も増大、税収も増加といいことずくめなんじゃないかと思うんですが・・。

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