生命保険を検討する際に必ず知っておきたい、たった1つのコツ「比較」


◆「根拠に基づいた医療」という考え方

医療の用語に、
・Evidence Based Medicine(エビデンス・ベースド・メディスン)
・informed consent(インフォームド・コンセント)
という言葉があります。

それぞれの言葉の意味は、
・「根拠に基づいた医療」
・「正しい情報を得た(伝えられた)上での合意」
であり、最近の医療現場ではともに重要な考え方とされています。

2012年12月、雨上がり決死隊のボケ担当、宮迫博之さんが幸運にも人間ドックで初期の胃がんが見つかり、すぐに切除手術を受けて話題になりましたが、特にがん医療などの現場では、この2つの考え方が基本とされているそうです。


さて、考えてみてください。
あなたが受診した人間ドックで、宮迫さんと同様、「初期の胃がん」が見つかったとします。

どうしましょうか?

がんの罹患がわかった場合、ご自身のがんがどのステージにあるかをきちんと知らされた上で、
お医者さんから”客観的な事実と治療方法等についての適切な説明”があって、自身が”十分に了解”してから治療を始めてほしいと思いませんか?

この”客観的な事実と治療方法についての適切な説明”が「エビデンス・ベースド・メディスン」であり、患者が”十分に了解”した状態で治療を開始することが「インフォームド・コンセント」と言われています。

言わば「その治療を受けた場合、どれだけの利益があるか」は、医者が判断するものではなく、患者が判断するものだという考え方です。「根拠・データの無い治療ではなく、”Evidence”すなわち”証拠”に基いて治療しよう」ということです。

◆商品比較は「生命保険のタブー」だった

実は、生命保険の検討にあたっても、この考え方が適用できます。

2012年8月、新聞やインターネット上でオリックス生命がこのような比較表を出して話題になりました。オリックス生命の商品と、インターネット生命保険会社2社の商品比較です。


他の業界ではこのような比較広告は珍しくありませんが、保険業界でこのような試みはこれまで殆ど無かったと言っていいものです。というのも、保険業界は比較をずっと避けてきた歴史があるためです。

私はもともとIT業界の出身ですから、自社の商品は他社と比較されて当たり前という感覚があります。顧客から、他社のものに比べて商品内容が良くない、価格が高いなどとと評価されることもしばしばあります。個別にいろいろと言いたいことはあっても、評価するのは顧客ですから、そのような評価をされたくなければ自社の商品がよくなるように努力するべきです。

ところが生命保険という業界は非常に特殊で、意図的に商品を比較しにくくしているとしか思えない商慣習があります。例えば、住友生命がある商品の契約例としてネットに公開している表は、こんな感じです。

被保険者が死んだら5000万円の保険金が払われるという定期保険ですが、この表を見て費用対効果が判断できるでしょうか?

この保険、10年定期保険という商品で、貯蓄部分はない、いわゆる掛け捨てタイプの商品です。40歳の男性がこの保険に加入するとすれば、月額の費用は17,100円。これが10年間、つまり120か月続きますから、10年間で掛かる保険料の合計は、17,100円×120か月=205万円です。10年以内に死ねば5000万円払われますが、死ななければ205万円を保険会社がかっさらっておしまい、という、いわば丁半博打的な要素を持っている商品ともいえます。

この保険で、40歳から50歳までの10年間の保障を買うと205万円、50歳から60歳までの10年間の保障だと約400万円が掛かる勘定です。もし40歳から60歳まで20年間この保険に入り続けると、トータルでは約600万円を払うことになります。良い悪いは別にして、これが客観的な事実ですが、この表からそこまで読み取れるかというと一般的にかなり難しいと思いますし、読み取れたとしてもその値段が相対的に高いのか、安いのかは判断できないはずです。他社との比較情報がないからです。

多くの保険会社からすると「比較してほしくない」事情があります。この保険と同じような保障内容の定期保険でも、自社の商品よりも他社の商品の方が保険料が安いと分かれば、多くの消費者は安い方で契約すると考えられるためです。比較情報が世の中にあふれれば、価格競争に巻き込まれることになるでしょう。 現在、日本で営業している生命保険会社は40社ほどありますが、保険の自由化が進んでいるため、これらの保険会社は各社自由に保険を設計しています。各社の保険を比較すれば、同じような保障内容でも2、3割、ときには倍以上保険料が違うこともあります。死亡保険金:5000万円、保険種別:10年定期保険、被保険者:40歳男性という共通条件で、実際に比較してみたエビデンスが、こちらです。

10年間の期間限定で5000万円の死亡保障を買う場合、最安値の保険だと10年合計で掛かるコストは96万円ですが、最高値のものだと230万円もします。同じような保障内容の保険でも、掛かるコストにこれだけの違いがあるのです。このように、比較しないで知らないままに保険に加入してしまうと、大損する可能性があるわけです。実にこれだけの違いがありますから、保険の比較は保険会社の経営を根本から揺るがすことになるかもしれないのです。

その一方、消費者としては保険商品にどのような違いがあって、保険料がどう違うのか、貯蓄型の商品であればいつまでにいくら貯まるのかなど、データを並べて比較検討したいと考えるのは当たり前です。仮にトータルで1千万円の保険料がかかるとして、3割保険料を安くできれば300万円も節約できます。ひと財産、生まれることになります。

増税、年金、社会保険料、教育費など、先行き不安な私たちの生活にとって、保険の比較は非常に重要な意味を持っています。そんな保険業界で、話題のネット型生命保険と比較したオリックス生命のサイトが業界に衝撃を与えたのは当たり前とも言えます。長い間タブー視されてきた保険商品の比較を、保険会社自らが堂々と行なったのですから。

◆自由化のメリット・デメリット

自由化が進み、保険会社が違えば保険の内容、保険料が違う。今は競争が進み、ひと昔前より全体的な保険料の水準が下がったり、保障内容が手厚くなったりしてきています。また、保険ショップなどが街中に溢れ、消費者にとっては選択肢が無数に広がり、環境はよくなったように思えます。ところが、一方で大きな問題が発生しています。多種多様な商品が出てくることによって、商品の情報ばかり多くなって選びにくくなっているのです。

一般人ではとても追い切れないほど、たくさんの商品が産まれては消えていく。保険会社は今年の4月に全社一斉に保険料を値上げするという記事を書きましたが、これによって、いま売られているほぼ全ての商品の価格、保障内容などが改定されることが考えられます。こういった状況の中で適切な保険選択をするためには、多様なプランの中からお勧めを選んでくれるプロの力を借りるのが手っとり早いと言えます。

◆比較のガイドラインは?

こうした問題の解決には、わかりやすい比較情報が必要ですが、ガイドラインはどうなっているでしょうか。監督官庁である金融庁としては「比較してもいいよ」というのが基本スタンスです。2012年7月に、金融庁は「保険会社向けの総合的な監督指針」を出していますが、このなかで商品比較に関しては、「客観的事実に基づく事項又は数値を表示」することなどを前提に比較表示を認めています。意図的にデータを改ざんしたり、誤解を生むような比較は顧客保護の観点からもちろんNGですが、適切に情報を開示することという条件付きで比較を認めているのです。

◆比較に必要なのは客観的なデータとプロの智恵

数多くある保険商品の中から自分にあった商品を選ぶためには、もはや保険の比較情報は不可欠といってもいいでしょう。インターネット上にも情報があふれていますが、選択に役立つ情報は残念ながらあまり多くありません。それどころか、ネットの情報は古かったり不足していたりして、結果的に誤った判断をしてしまいかねないことがあります。そのため、客観的なデータを提示してくれる、信頼できそうなプロにできるだけ対面で相談することをお勧めします。

オリックス生命が行なったアンケート結果によると、保険を検討する人の実に85%は他社と商品比較したいと答えているそうです。このような結果をもとに、競合力のある商品を開発し、自ら他社との比較を公表したオリックス生命の企業姿勢は素晴らしいと思います。

上記で示したとおり、まったく同じような保障内容でも掛かる費用は倍以上違う場合があるのですが、そのような実態を知っている人はまだまだ限られています。生命保険への加入に際しては、必ず客観的なデータとプロの智恵を借りて、各保険会社の保険料や保障内容を比較するようにしましょう。

 

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