男性にはあまり馴染みのない業界のひとつに、化粧品業界があります。
その化粧品業界でたったひとりで創業されて、屈指のメーカーに築きあげられたベンチャー企業があります。そのベンチャー企業とは、無添加化粧品で知られるファンケルです。
人を幸せにしないと、商売はうまくいきません(経営者通信Vol30号 ファンケル化粧品 池森社長インタビュー)
とても共感できる記事だったので、ご紹介します。
(ちなみにファンケル化粧品のステマではありません。念のため・・)
(1)「人を幸せにする」という原点を忘れない
ビジネスをやっていると、どうしても集客や売上、利益などを中心に考えがちです。
でも、ビジネスの原点が何かと言えば人の役に立つこと、人を幸せにすることのはずです。
池森社長がファンケルを創業されたきっかけは、化粧品に含まれる添加物のせいで奥様が肌荒れを起こされたからだそうです。じゃあ無添加の化粧品を作ろう。そういったシンプルな発想で、「お客様に安全と安心を届けたい」を原点として画期的な商品を開発され続けています。
「安全と安心を届けたい」という企業姿勢は、顧客サポートの面にもデータで表れていて、こちらの調査によれば、ファンケルのオンラインサイトは、23業種、133企業の中で顧客サポート第1位となっています。
(2)常識にとらわれず、単純に考えて本質をつかむ
無添加の化粧品、通信販売、アンプル提供などはいまでこそ一般的ですが、実はファンケルが始めたことで、美容業界では非常識だったそうです。
そのほかにも、ファンケル独自のサービスは
・少量ロットでの提供(無添加なので長持ちしないため)
・お客様指定の場所へ配達(自転車のカゴの中や、洗濯機の上などでも指定できる)
・”製造年月日”と”フレッシュ期間”を明記
・全成分をWebで公開
など、非常にユニークです。なかでも全成分の公開はスゴイと思います。
(3)時代にあわせた商品を考える
環境問題、食事などでもそうですが、「安全、安心」は今や時代のテーマとなっています。そんな時代にあわせた「無添加化粧品」だからこそ、消費者のニーズにピッタリはまったのです。時代のニーズは刻々と変わっていきます。ありとあらゆる商品は、時代のニーズにあわせて変えていかないといけません。
(4)本業を傷つけそうな事業は見切る
投資の用語に「見切り千両」という言葉があるように、事業に赤字が出そうなとき、伸び悩むときにはスパッとやめる手もあります。この記事によれば、ファンケルは台湾とシンガポールで30店以上を展開していた小売事業を2014年3月までに撤退されるそうです。
撤退事例といえば、別業界では2004年にパソコンの製造・販売から手を引いたIBMが有名です。ThinkPadのノートPCといえばビジネスマン御用達のブランドでしたが、LENOVOに事業ごと売却しました。
この結果どうだったかといえば、こちらの記事を見ると、2004年にPC事業を売却してから、IBM全体の売上・利益が右肩上がりに伸びていることがわかります。
既存ビジネスからの撤退は非常に難しい判断です。しかし将来の芽がなさそうな事業からの撤退をうまく見極められれば、結果として企業の競争力を上げられることもあるのです。
(5)明確な方向性と戦略を示して人材を育てる
様々な変化が素早く起こるビジネス環境では、自発的に物事を考え、行動を起こす人材が重要になります。しかし、そういった人材がそう簡単に転がっているわけはありません。会社の目指す方向性、戦略に貢献できる人材を育てる必要があります。
問題は、新しいビジネスモデルを作るには「こうあって当然」という先入観を打破して、既存のルールからはみだす人が必要なことです。普通の組織ではそういう人は異分子なので育ちにくいんですね。
この問題に対して、ファンケルの場合は会社のとして「変えない点」と「変える点」を明確にすることで対応しているそうです。まず「変えない点」は、「お客様の安心と安全を守ること」「お客様目線で物事を考えること」の2点。
その一方で、時代のニーズにあわせて商品や売り方などはどんどん変えていくことを推奨しているそうです。
ファンケルの池森社長によると、「時代がどう変わるかではなく時代をどう変えるかが、ファンケルのベンチャースピリット」と語っておられます。経営者自らが変えない点、変える点を明確に示してブレないからこそ、社員は自分たちで考えることができるようになるという発想ですね。
お金を儲けるためではなく、人の幸せのために商売をする。
悩んだときにこそ、この原点に立ち戻るべきですね。