「TPPで市場が乗っ取られる」は幻想 変化し続けないと生き残れないだけ


TPP参加についての懸念を呈する記事を書きました。

「かんぽ新商品認可見送り」に見る、TPP参加が失敗するかもと思う理由

この記事では、産業という大きな括りで見ると、自由競争の中で日本企業が外資企業に負けて、シェアを奪われるかもしれないという意味で「TPP参加が失敗するかも」と書きました。ですがその一方で、TPPによってもたらされる自由競争そのものは、一般消費者にとっては恩恵のほうが多いと思います。

自分の専門とする、「生命保険業界の規制緩和」を例に取ってみます。
その昔、日本には「漢字生保」しかありませんでした。漢字生保というのは、日本生命、第一生命、住友生命、明治生命、安田生命、など・・・、いわば創業50年以上の歴史ある生命保険会社です。

昔は政府主導の規制があったために、どの会社も売り物、営業手法などは、横並びで殆ど同じでした。20年以上前の話しですから金利水準も今より相当よく、仲良くなった人から買えばそれで良かったワケです。

しかしバブル崩壊、金融ビッグバン、リーマンショックなどを経て、時代は様変わりしました。生命保険会社が約束する運用利回りは、「失われた20年」前の5%前後から1%にまで下がっています。それに金融自由化が進んで、外資系などの会社が市場に参入して、今では40社以上もの保険会社がシノギをけずっています。

2001年以降の生命保険の市場動向はこちら↓です。

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この表を見ても分かるとおり、生命保険はどうみても成長市場ではありません。日本の人口も、2008年の1億2800万人をピークに、これからは右肩下がりでどんどん減っていく。具体的には毎年人口の1%と言いますから、毎年100万人ずつ減っていくことが将来人口推計で明らかになっています。生命保険は人の身体に掛けるものなので、人口が減ればマーケットが小さくなっていくのは自明とも言えます。

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こちらの画像は、ライフネット生命さんからお借りしました。

このような時代の変化に伴って、消費者のニーズにも大きく変化しています。このようなニーズの変化に対応できるように40社以上の会社が、多様な商品を売っているのが現状です。消費者からすると、かつては画一的な商品を選ぶしかなかったわけですが、今では自由競争社会になったおかげで自分の家計やライフスタイルなどにあった保障をカスタマイズして選ぶことができるようになってきたのです。

生命保険業界もこの変化に対応してきています。複数の保険会社の商品を比較できる、生保代理店(「保険の窓口」や「保険市場」など。私の会社もここに含まれます。零細ですが・・)という業種が知名度を上げてきていますが、その中には顧客ニーズに合わせて商品を売ることによって、ここ数年、毎年2ケタ増収増益と大きな伸びを見せているところもあります。

この画像をお借りしたライフネット生命さんも全く同じ。2008年にWEB専業という今までなかった業態をスタートされてから、契約高は右肩あがりです。市場全体では売り上げは減少しているかもしれませんが、顧客のニーズに合わせて既存のやり方を変えた一部の会社は、このように大きな成果を残しているのです。

とはいえ、上述したように失われた20年のあいだに生命保険会社の運用利回りが5%から1%にまで下がってしまったのは、事実です。だったら、「自分のニーズにピッタリの、より金利が高くて消費者有利な商品が買えるようになったらいいのにな」と思いませんか?ひと言でいえば、わたしが言いたいのはそれだけです。

世の中ではTPPで市場がアメリカに占有されるかもと大騒ぎですが、あくまで私見ではありますが、「黒船来襲によって市場が乗っ取られる」というのは過去何度もいわれてきた幻想にすぎないのではないかと思います。時代の流れの中で、消費者に支持されるモノ・サービスは残るし、そうでなければ廃れていく。それだけのことではないでしょうか。過去の事例をいくつかあげてみます。

◆農業

アメリカから米の輸入が解禁になったとき、日本の農作が滅びると大騒ぎになりました。でも今、スーパーに行ってカリフォルニア米を見ることがありますか?リンゴも同じです。アメリカ産のすっぱいリンゴ、もうすっかり見かけることがなくなりました。国産の農産物が外国産を駆逐した好例です。

◆流通

スーパーマーケットでいえば、80年代のトップはダイエーでした。4位がジャスコです。今ではこれが逆転し、イオン(旧社名ジャスコ)がダイエーを子会社化しました。フランスのカルフールは参入してきましたが数年で撤退、アメリカのコストコは、これまで日本人が見たこともないような倉庫型の販売手法が消費者に受け入れられ、数年前には幕張に1店舗あっただけだったのが、今では20店舗にまで伸びています。コストコは個人的にも非常に楽しくて好きですが、外資系のスーパーマーケットが日本でイオン、セブン&ホールディングスをおびやかすまでになるかといえば、これは極めて疑問だと思います。

◆アパレル

H&MやZARA、GAP、フォーエバー21などのファストファッションは、すっかり定着したと言えると思います。こういった海外ブランドに対抗すべく、日本企業ではユニクロが「もう国内市場だけではダメだ」ということで、積極的な海外展開とグローバルで通用する人材育成を進めているのは、もはや周知のとおりです。

ご参考:柳井社長インタビュー記事「あまやかして世界で勝てるのか」

私が挙げるまでもありませんが、これと同じような事例は、枚挙にいとまがないと思います。

結局のところTPPに限らず、これからは変化の速い時代ですから、それにあわせて変化し続けないと生き残っていけないよ、ということのような気がします。よっぽどのことでもない限り、外国のモノ、サービスというだけの理由で敬遠されるような時代ではもはや無いように思います。

逆に言うと、モノ、サービス本来の品質でしか評価されないということですから、個人レベルでも企業レベルでも、他にはない強みを磨かないといけない。とにかく、勝ち負けが目に見えてハッキリしていく。そんな時代が来ているということではないでしょうか。

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