「かんぽ新商品認可見送り」に見る、TPP参加が失敗するかもと思う理由


麻生太郎財務・金融相が、かんぽ生命の新商品販売を認可しないことを表明しました。

麻生太郎金融大臣


米に配慮、かんぽ新商品認可せず TPP日米協議合意

日米両政府は12日午後、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた合意文書を発表する。米国側が懸念していた保険分野では、日本郵政傘下のかんぽ生命保険ががん保険など新商品を申請しても日本政府は当面認可しないことを決めた。

安倍政権は12日に関係閣僚会議を開いて合意文書を決定。その後、安倍晋三首相が発表し、甘利明TPP担当相が記者会見して合意内容を説明する。

TPPをめぐる日米間の事前協議では、日本政府の関与が残るかんぽ生命の事業拡大に米国側が自国の保険会社が競争で不利になることを懸念していた。麻生太郎財務・金融相は12日午前の記者会見で、かんぽ生命によるがん保険など新商品の申請について「今後、適切な競争関係が確立されたことが判断できるまで少なくともその認可を行う考えはない」と強調。認可しない期間を「数年間はかかる」との見通しも示した。

安倍政権は12日に関係閣僚会議を開いて合意文書を決定。その後、安倍晋三首相が発表し、甘利明TPP担当相が記者会見して合意内容を説明する。
(以下略ソース参照)http://www.asahi.com/politics/update/0412/TKY201304120068.html


日米協議で「かんぽ生命」の新商品の認可が数年間は認められないことになりました。目先では「がん保険」が認可されません。認可がおりないと販売することができませんので、事実上、新商品を売ることができなくなります。

TPPにおけるアメリカの、日本の生命保険市場に関する主張は、「かんぽ生命保険に法制上または規制上の特権を無くし、対等な競争条件を用意すること」です。(米国生命保険協会のパブリックコメントより)

実はこれ、「郵政改革を考える民間金融機関の会」の主張とも共通しています。実質的に国営の「かんぽ生命」が、全国ネットワークを駆使して自社の保険を販売するのは民業圧迫ではないか!というワケです。

◆かんぽ生命は世界最大の保険会社

「かんぽ」といえば、郵政民営化前までは郵便局が扱い、現在はかんぽ生命保険が扱う保険商品の愛称として有名です。V6の伊ノ原さん扮する、テレビCMもよく目にすると思います。「保険のことなら、かんぽさんと話そ。」「頼れるわ~、かんぽさん!」という感じですね。

頼れるかんぽさん




画像:頼れるかんぽさん

そのかんぽ生命ですが、実は保険契約数800万件超、総資産は200兆円近い、世界最大の生命保険会社です。そして、その膨大な資産の運用は日本国債が中心となっています。平成24年3月31日現在で、かんぽ生命は約60兆円もの国債を保有していますから、日本国債を買い支えている機関投資家という側面があります。

◆かんぽ生命の商品ラインナップに「がん保険」がなかった理由

そのかんぽ生命にはこれまで、「がん保険」がありませんでした。これはなぜか?かんぽ生命は以前、日本生命と業務提携を結び、「がん保険」を新たに販売しようとしていました。しかし、それに疑義を述べたのがアメリカの保険業界です。なぜかというと、日本国内の「がん保険」は、アメリカの会社であるアフラックが7割ものシェアを持っているからです。そのため、世界最大の保険会社であり、政府の後ろ盾もあるかんぽ生命が「がん保険」業界に参集してくるのを懸念したと言われています。

◆アメリカの本当のねらいは「がん保険」市場などではない

この報道だけみると、アメリカが狙っているのはあたかも「がん保険」業界で、アフラックのシェアを守るためにかんぽ生命の参入に懸念を示したかのように見えるかもしれませんが、そんなニッチ市場だけしか狙ってないワケがないと思います。

詳しくはこちら↓の投稿に書きましたが、民間の生命保険会社で販売されている商品を日米で比較すると、圧倒的にアメリカで売られている商品の方が有利なのです。

TPPが解禁になったら日本の生命保険会社は壊滅するかも

アメリカの「対等な競争条件を用意してくれ!」という主張どおりに対等な条件にしたら、一般人からすると利回りの良い金融商品が買えてハッピーになる一方で、かんぽを含む日本の生命保険会社はみな、壊滅的な打撃を受けるでしょう。そうなると、これらの保険会社に勤めている社員や関連会社などの経営といった問題もあります。がそれ以上に、保険会社が保有する膨大な量の国債、株、社債などの金融資産がどうなるのか、という大問題もあります。

冒頭にて「かんぽ生命保険に法制上または規制上の特権を無くし、対等な競争条件を用意すること」がアメリカの狙いと書きました。つまりアメリカの本当の狙いは「がん保険への参入」などではなくて、「かんぽ生命に預けられている個人・法人資産ぜんぶ。もっといえば、全ての金融機関に預けられている日本人の金融資産ぜんぶ」ということになります。

◆医療サービスの自由化は「社会保険」の問題

TPP解禁によって、「国民皆保険が破壊されるのでは?!」という指摘があります。この場合の「保険」とは「公的社会保険」のことなので、今回の報道とは毛色の違う問題ですが、ネットではよく社会保険の問題と、金融サービスとしての保険の問題が混同されているように思うので、少し触れておきます。

まず、社会保険については、アメリカが狙っているのは日本の医療サービスへの進出といわれています。混合診療という言葉がありますが、日本では現在、公的医療保険の対象になる治療と、対象にならない治療の混合が認められていません。

これが認められるようになると、貧乏人とお金持ちの医療水準が当然変わってきます。

現在、公的医療保険でカバーされる薬の値段や診療費は国が決め、安価に抑えられています。
これに対し、医療分野でも輸出拡大を目指すアメリカは、自由診療を広げるため、TPP交渉で混合診療の全面解禁を求めてくると想定されています。アメリカからすると、自国企業の高い薬を売り、高額治療に備える民間医療保険の加入を増やす狙いがあるほか、株式会社の病院参入を求めてくる可能性もあるとみられています。

◆どちらにも共通することは、「国際競争力があるかないか」という問題である

このように、「民間の生命保険を含む金融サービスの自由化」と、「医療サービスの自由化」の問題は別の話しです。ただ、共通するのは「国際競争力ゼロの自分たちの社会をつぶされたらたまらんという業界意識」ではないかと思います。

もしTPPに前向きに取り組むのだったらオールジャパンで国際競争力を向上させる努力をしたら良い話だと思うのですが、不思議なことに日本ではそうなりません。「参入規制」となり、「TPP反対」となります。

例えば、生命保険業界では「ソルベンシーマージン比率」というのがあります。生命保険会社の財政の健全度合いを示す指標ですが、この指標、国債を高く買えば買うほどポイントが上がる仕組みになっています。「ソルベンシーマージン比率」をあげることは、格付けや売れ行きにも大変おおきな影響を与えますので、生命保険会社はせっせと国債を買います。その結果、保有資産のかなりの部分を国債が占められるわけです。

でも、ここ最近の市場の動きはどうでしょう。去年6月に約8,000円だった日経平均は、2013年4月15日現在、13,000円超の値を付けています。この間、日本株式に投資していなければものすごい機会損失が起きています。結果論ですが、ここで得られたであろう利益を商品に還元出来れば、非常に競争力のある商品が生み出せていたかもしれないからです。

これは一例でしかありませんが、「郵政改革を考える民間金融機関の会」は、かんぽ生命に対しては民業圧迫!と言ってますが、TPPに対しても否定的な立場です。「業界を守ろう」「自社を守ろう」という姿勢ですから、こんな状態でTPPに臨んでも失敗するに決まっていると思ってしまいます。

TPPに参加するって本質的には、自国の商品なりサービスなりが国際競争に巻き込まれるってことにほかなりません。原則的に自由化するわけだから、消費者からみたら他国の秀逸な金融サービスなり、医療サービスなりを買えることになります。アメリカの狙いはかんぽ生命に預けられている個人・法人資産」なんて書くとあたかもアメリカに資産を奪われるような印象を受けますが、一般人からするとより有利な海外の金融サービスが買えるようになるだけの話です。

と書くと、何やら評論家のようになってしまいますが、要はもっとも有利な金融サービスが買えれば、一般消費者のレベルではハッピーなのではないかと思います。これから先、国が自分の資産や生活を守ってくれる保証はありませんので、なにがあっても大丈夫なように自衛しないといけませんから。

このつづきは、こちら↓からどうぞ。

「TPPで市場が乗っ取られる」は幻想 変化し続けないと生き残れないだけ

とりあえず今の国内で売られている保険商品で一番よいものを選びたい!という方は、こちら↓の書籍が参考になれば幸いです。電子書籍は100円です。



カテゴリー: ファイナンス, 時事問題, 海外, 生命保険, 雑感 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です