あなたも身に覚えがありませんか?

保険会社の本音は、「たくさん保険を買って欲しい」「新契約が欲しい」ということです。そして、売っている人もたくさん新契約が獲得できれば、成績アップなどに繋がります。これ自体は、何を売っていてもそうですが営利集団である以上、極めて普通のことだと思います。

生命保険会社には顧客に直販する営業マンだけではなく、代理店を担当する営業マンがいます。実は弊社にも「新商品やキャンペーンのお知らせ」ということでよくお見えになります。私が勤務しているのは22社の商品を取り扱う乗合代理店ですから、必然的にさまざまな商品のプレゼンテーションやご説明を受ける機会が多いわけです。

本来でしたら消費者のために最も役に立ちそうな商品だけをご案内いただければ一番よいのですが、問題は、なかにはとても顧客に勧めたいと思えないような商品も存在することです。そして、取り扱いが難しいのが、その営業マンは「恣意的にそういう商品を持ってきている」とは一概に言えないところです。

これも例を出して説明しておきます。

■ C保険会社 医療保険
月額保険料:4800円
40歳 男性 医療保険
保障期間:終身
払込期間:終身
掛け捨てタイプ
取り扱い:C 保険会社
入院一日あたり:1万円
手術を受けた場合(部位などにより):5万円、10万円、40万円
一入院限度日数:60日

入院したら1日1万円と、手術した場合に保険金が出るという、ごくオーソドックスな保障内容の医療保険です。だれでも一度はCMなどを目にしたことがある、超有名な生命保険会社の主力商品です。ちなみに、同じ保障内容(入院日額1万円)の医療保険で、他社の保険料はこんな感じです。

D保険会社=月額保険料 3980円
E保険会社=月額保険料 4210円
F保険会社=月額保険料 4280円
(中略)
X保険会社=月額保険料 5580円
Y保険会社=月額保険料 6290円
Z保険会社=月額保険料 7950円

同じ保障内容の商品でこれだけの違いがあるというだけでも驚きかと思いますが、費用面だけで考えて、月額が4800円というC社の保険料は相対的にそれほど割高なわけではありません。だいたい真ん中クラスの保険料ということができます。しかし、先ほどもお話ししましたが、消費者にこのような価格差があるという事前知識があったら、どういう選択をするかという点がまず大切なポイントです。

そして、次に「そもそもこの医療保険が必要なのか?」という点です。C社の医療保険の費用対効果を考えてみたいと思います。

4800円の保険料で、払込期間は終身です。つまり、契約を継続する限りずっと、最終的には一生涯払い込むタイプの医療保険です。話しをわかりやすくするために、期間を区切って
60歳までと考えてみます。40歳から60歳まで契約を続けるとすれば、4800円×12か月×20年=115万2000円を保険会社に支払う計算になります。この支払った金額を回収するために何日入院する必要があるでしょうか?

単純化するために手術は抜きにして考えると、20年間で実に116日以上の入院が必要になるという計算になります。前章で、日本には健康保険(3割負担)に加えて、高額療養費制度というものがあることに触れました。つまり、単純計算ですが20年間に116万円以上の(自己負担の)医療費が掛かった場合でないと、この保険の元は取れないということです。

実はこのタイプの保険は相当売れていますから、心当たりがある方はかなり多いのではと思います。しかし合理的に考えてみれば、かなり譲ったとしても100万円程度の余裕資金(貯金)がある人に、このような保険は不要と考えられると思います。

どうしても必要な方は、急な医療費の出費に耐えられない方、もしくは「お金は無駄になっても安心していたい」という心配性な方に限られるでしょう。(仮に必要性があったとしても、C社よりD社が安値ですが)

さて、今までの話を前提に、あなたがC社の経営者でたくさんこの医療保険を売りたいと考えたとしましょう。どうしますか?

考えられる手段を挙げてみましょう。
① かわいらしいキャラクターや有名な俳優などを活用したCMで、とにかく認知度を上げる
② セールスパーソンへの手数料、コミッションなどを上げて、たくさん売らせる
③ ダイレクトセールスの比重を上げる(できるだけ消費者に比較をさせない)
④ 「もしものときに備えられる保険」という保障内容を強くアピールする
  (こんなに医療費が掛かる場合があります!などというキャッチコピーで消費者の不安を煽る)
⑤ 「安心のX生命!私たちにお任せ下さい」という安心感を強調する
⑥ 「月々、わずか4800円」と安さで売り込む(実は他社のほうが安かったりしますが……)

ざっとこんな感じでしょうか。

そして、実際にこのような手段が取られているわけです。もっとも、C 社の立場からしたら他社のほうが安かろうが自社の商品を売ることのほうが大切なのですから、当たり前のセールスでしょう。しかし消費者の立場からみたときに大切なことは、このような実態を本当に理解したうえで、必要性を判断できているかどうか、ということにほかならないのです。
 

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