義理人情で500万円もの違いがつく!

興味をもってここまで読まれた方であれば、保険が金融商品であるといった程度の認識はすでにおもちでしょう。そして「金融商品(サービス)の価値はROI(費用対効果)だけではない。保険に加入するのは、営業担当者への信頼や、保険料を支払った分の安心感や満足感も買っている。だから、シンプルイズベストでは決してない」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

もちろん、生命保険会社の社員が身内や知り合いにいたり、信頼できる営業マンが身近にいて、応援の気持ち(義理も大いにあると思いますが)から保険に加入される場合もあるはずです。わたしはそれを否定する気持ちはありません。むしろわたし自身、自分が生命保険業界に入った際には、友人や知り合いからの契約に大いに勇気付けられた一人です。保険契約に「お付き合い」といった要素が付き物であることを否定するものではまったくありません。

でも、業界の中にいて契約いただく方への感謝を痛感したからこそ、あえて提言しておきたいのです。

お付き合いや義理の代償が、トータルで高級車が1台買えてしまうほどの機会損失を招くと事前にわかっていて、それでもあなたは非合理的な保険を選択するでしょうか?

実際に存在している保険のプランを例にして、具体的な比較をしてみましょう。

【共通条件】
●被保険者  : 35歳男性
●保険種類  : 10年更新 定期保険
●死亡保険金 : 5000万円
●払込方法  : 月払

【比較結果】
A社
月額保険料 5650円
保険料10年累計 67万8000円

B社
月額保険料 1 万5450円
保険料10年累計 185 万4000円 

A社の保険とB社の保険。死んだら5000万円が支払われるというまったく同じ保障内容ですが、10年間の累計では支払う保険料が118万円もの違いになります。さらに、この保険を30年続けるとどうなるか。10年後、20年後の保険料が正確にわかるわけではありませんから、45歳時点、55歳時点で上記の保険に加入したとした保険料累計額を合算した推定値になりますが、ざっくりA社の保険料累計が約500万円となるのに対して、B社の保険料累計金額は1000万円を超えてきます。

お付き合いや義理でたまたまB社の生命保険に入ってしまうと、A社と比較して約500万円も多くのコストが掛かります。決して無視できない金額です。

さて、同じ保障内容の生命保険で、なぜこれほどコストの違いが出るのでしょう。

ひとつめの大きな違いは加入条件です。A社の商品は「非喫煙者優良体」といって被保険者を選ぶ商品だったのです。これは、1年以内にタバコを吸ったことがなく、BMIが一定の水準以下であるなど、健康状態に関する所定の条件を満たした人のみが加入できる保険です(リスク細分型商品といいます)。一方で、B社の商品はそういったリスク細分の条件がありません。

もうひとつは、保険料の構造です。保険料というのは、「純保険料」+「付加保険料」で決まります。

「純保険料」とは死亡保険金の支払いに充てられる金額で、「死亡率」と「運用利率」で決まります。これは生命保険の純粋な原価です。「死亡率」は統計データで決まり、「運用利率」は各社の運用利回りで決まります。このふたつは、日本国内の保険会社同士であるかぎりそれほど大きく変わりません。一方、「付加保険料」とは保険会社の経費や利益になる部分です。保険料が結果として大きく変わるのは各社の「付加保険料」に大きな違いがあるからと言われています。保険会社も営利目的の企業ですから当然といえば当然ですが、経費や利益は生命保険会社の都合であって、生命保険に加入する消費者からにはあまり関係のない要素です。

さて、あなたがA社の保険に加入できる健康状態で、あらかじめこうした知識をもっていたなら、いくら義理がある人からのすすめだとしても、はたしてB社の保険にわざわざ加入するでしょうか?

まったく同じ保障内容の保険でも、綿密に比較するとこれだけの違いが発生するのが日本の生命保険の実情です。生命保険で「損」をしないためには、まず、この事実を知ることがスタートといえるでしょう。

 

カテゴリー: 生命保険。知らない人が損をする理由 パーマリンク