指切断の大事故!………でも保険金がおりない?

「こういう場合には保険金は支払われませんよ」という「例外」がたくさんある

いきなりですが、生命保険にまつわる少し怖いお話しをします。怖いといっても、保険金詐欺のような犯罪行為ではありません。契約に則ってきちんと手続きがされたのに「こうなってしまう場合がある」という具体例です。

もっとも、だからこそ余計に怖いと思われるかもしれませんが………。

ある男性が、友人のツテで医療保険に加入しました。
「万一の病気やケガのために入っておいてもいいかな」、「営業マンは古くからの友人だし、彼の役に立てるのなら」という感覚で契約したのです。ここまでは、よくある話でした。

ところがある日のこと、この男性が勤務先からの移動中に交通事故に巻き込まれ、右手薬指の第1関節から先を切断する大事故に逢ってしまいました。ちょうど爪のある部分を約1センチほど失って、落とした指は回収できませんでした。

ご本人やご家族の思いを察すると、本当にご不幸な出来事としか言いようがありません。

でも、その男性は「少し前に友人のツテで医療保険に入ったばかりだったのが、せめてもの救いだった」と気を強く持ち、友人の生命保険会社営業マンに連絡を取って事情を説明し、保険金の請求手続きをしたい旨を伝えたのです。

ところが、後日届いた生命保険会社からの回答は思いもよらないものでした。
「ご加入いただいた医療保険で手指の欠損に関して保険金が支払われるのは、親指であれば第1関節以上、そのほかの指であれば第2関節以上を欠損した場合になります。今回は薬指の第1関節までですから保険金が支払われる対象になりません。お気の毒ですが、保険金は支払われません」

これが生命保険会社からの正式な回答でした。

少し生命保険に詳しい方であれば誰でも知っていることですが、生命保険に加入していても「こういう場合には保険金は支払われませんよ」という「例外」がたくさんあるのです。

「どういう場合に保険金が払われるか?」生命保険のプロもすべて把握していない

保険金の支払いに関しては、保険会社側からするときちんと定義しないと、契約者の言いなりに保険金を払わないといけなくなってしまう可能性があります。そのため、約款という分厚い本(保険会社によってはCD−ROMになっている場合もあります)に契約内容がこと細かに定義されています。

まして医療保障や介護保障タイプの商品ですと、死んだら保険金が支払われる死亡保障の商品と違って、被保険者のからだの状態は千差万別。保険会社が不利な支払いが生じないように「保険金支払われない例外」が数多く設定されているのです。

指の切断事故のケースは一例ですが、たとえば医療保険を検証すると「どういう場合に保険金が払われるか?」は各社によって、さらに商品によってもバラバラです。すべてを詳細に把握している人は生命保険のプロを含めてほとんどいないでしょう。

ちなみにこのケースでは、薬指第一関節の切断で医療保険からの保険金は払われなかったとしても、事故を起こした自動車が加入している自賠責保険の対象になるでしょうから、そちらをあたる必要があります。さまざまなリスクをすべて自前で加入する保険でカバーしようという考え方に、そもそも無理があるともいえるでしょう。

生命保険は、基本的にトラブルに遭遇したときの経済的な不安を解消するためのものです。でも、そもそも日本は国民皆保険ですから5歳以上70歳未満の医療費は3割負担です。それに加え、自己負担分が高額になる場合には、高額療養費制度といって自己負担金額が一定額を超えた場合にその超えた金額を国が支給する制度があるのです。たとえば、1か月間に100万円の医療費が掛かったとします。通常の医療費負担は3割なので、30万円を負担する必要があるのかというと、そうではありません。高額療養費制度では、一定の自己負担限度額を超えた分の払い戻しを受けられるので、自分で支払う必要があるのはおおむね8万7000円だけ。残りの21万3000円は国が負担してくれます。

これは日本の健康保険の基本的な制度のひとつですが、とくに20〜30歳代の若年層では「知らなかった」という方も多いのではないでしょうか。

また、勤務先によっては福利厚生の一環で医療費の補助が支給される企業もあります。

「病気になったら大変」という漠然とした不安から加入したくなる医療保険。病気になった際の収入を補填したいという目的もあるでしょうが、本当に医療保険が必要な人というのは「実際に自己負担する月額約8万7000円が払えない人」と考えることもできるのです。

あなたは、国の健康保険制度や、自分が勤務する会社の福利厚生のシステムをきちんと把握して、理解していますか? とくに医療保険への加入を検討するなら、そうしたシステムを抜きにして論理的な判断をすることはできません。ご自身の年収や貯蓄額などもあわせて総合的に考えて「それでも本当にこの医療保険が必要か」ということを判断するべきなのです。

生命保険は安心を買うシステムのはずですが、実は「知らない」というだけで、このように「怖い」ことにもなってしまうのです。

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