従業員の退職給与引当金のための生命保険戦略

従業員の退職金制度についての保険の活用法をお話します。多くの企業が退職金制度を持っています。当然就業規則で、退職金制度あり、という規程になっていて、算出方式についても記載しているのですが、その原資はどうやって確保するかというのがなかなか難しい課題となっています。退職時に会社の利益や内部留保から支払う、というのでは大変心もとない話です。

税制適格年金を導入している企業も数多くあります。ある規模になりますと、利益の一部を前倒しで退職金としてプールしておくことは、極めて重要なことです。退職金は賃金の後払いのようなものですから、当然労働法によって権利義務が明確なものとの位置付けがされています。言うなれば、企業にとっては労働債務ということになりますので、これをきちんと保全する義務が生じます。適格年金は、その退職債務の外部積立て機能として、法人税制上措置されたものですから、退職金準備としてはこれまで十分その機能を果たしてきました。今まで利益が順調にでてきた企業では、適格年金についてもほぼ要支給額を積立てきたケースが多いと思われますが、ここにきて適格年金の廃止が決まり、2012年3月で経過措置も切れる為、なんとか別の退職金準備の制度に移換する必要が出てきました。しかし、なかなか上手く移す先がなく、人事や経理の担当者は頭を抱えているという事態になっています。

 そこで登場するのが、民間の生保の活用です。昔から生命保険を活用した従業員様の退職金プランは割とポピュラーです。一定の基準の下、役員従業員が全員加入する福利厚生型の保険として、導入する会社も多かったのです。これは俗に、ハーフタックスプランと呼ばれ、保険料の半分を損金経理できましたので、税制上も有利なものとして人気がありました。むろん現在もありますので、適格年金を採用している会社でも、併せてこのプランを導入している会社もあるほどです。退職給与引当金で要支給額の40%を損金算入できた時代でも、半分を経費計上できたこのハーフタックスプランは、よりメリットがありました。資金を保険会社に拠出しますので、退職引当金より確実に、退職金の引当と実際の資金準備が両立できた訳です。

言い換えますと、退職給与引当金ではあくまで会計上の手当てであったわけですが、保険の場合、実際に外部に資金を積立てますので、退職時に保険の満期金の中から「資金」と「利益」を取り出すことができます。このためにもちいられた保険は、養老保険というもので、死亡保険金と満期金が同じものです。契約者は会社、被保険者は役員・従業員全員、受取人は満期金と解約返戻金については会社受取り、死亡時の受取人は役員・従業員の遺族 となっています。かつては保険会社の予定利率も5~6%と大変高かったので、十分運用益も享受できたのですが、今や利回りの水準もかなり低水準ですから、金融商品としての魅力はかなり薄れてきた感があります。ただし、保険料の半分を経費計上できるという退職金の前払い=外部留保的な性格は失われておりませんの、これをうまく生かして、従業員の退職金準備を図ることが可能です。

 社内で資金を準備するということが、実際には結構難しいので、このような社外拠出型の退職金準備は合理的です。万一の死亡保障もあるうえに、死んでも生き残ってもという、バランスの取れた方法になっています。この方法のデメリットですが、いくつか問題点はあります。一定の保険金額を決めて万一の保障と、退職資金の準備をするわけですが、例えば新入社員も保険対象にした場合、保険金額と退職金規程の金額とにかなり乖離がある場合どうするか。その場合、遺族に直接支払われた保険金を返してもらうのか。加入時の予定利率より金利が相当上がってきた時に、その保険を維持し続けられるかどうかといった点。損金割合が半分しかないので、半分は資金が資産で寝てしまうという点。などが、導入できるかどうかの判断の基準になるのではないかと思います。デメリットというより、そういった事態で、保険を解約してしまうおそれがあるので、その点を事前に検討しておくべきと言った方がいいでしょうか。税制上の恩典の面で、後発のより有利な退職金準備プランが出た時に、その保険をどうするかというようなことも考えられます。

ある意味、保険の場合は全てそのリスクがあります。その際にその保険を払済みといって、塩づけ状態にしたまま新たな保険を重ねる手法もありますが、払済みにした際に含み益を出さざるを得ない場合があるため、導入にはさまざまなケースを想定して、慎重に検討すべきかと思われます。というのも、次から次に各保険から新商品が出て、従業員の退職金準備にぴったりの福利厚生プランが出てきていますので、それらについてもよく研究する必要があります。

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