法人保険の活用法 その5 ドル建て終身保険

生命保険には、市場の状況により有利になる商品もあれば、不利になる商品もあります。たとえば1990 年ごろの予定利率は5%を超えていましたから、貯蓄性の高い終身保険や養老保険などは、今と比べて保険料は安く、解約返戻金ははるかに貯まりやすかったのです。それに比べて、2012 年の予定利率はだいたい1%〜1・5%程度です。現状のように低金利時代が続くと、資産運用の意味でも国内の生命保険の活用は不利になったといえます。

では消費者にとって有利になった指標はないのかというと、全くないわけではありません。外国為替(米ドル円相場)の推移をみてみましょう。90年代前半から、米ドル円相場は一貫して大幅に円高に振れ続けました。90年1 月に1 ドル= 140 円台だっ
たのが、円高が続いて94年には1 ドル= 100 円割れを起こします。そして1995 年4 月19 日、米ドル円相場は当時の史上最高値79円75銭と、瞬間的ではありましたが80円割れという異常事態を起こしました。その後、1995 年〜2007 年までは、1 ドル= 100 円以上の円安水準で推移していましたが、金融危機(俗に言うリーマンショック)が起きた2008 年9 月以降は、1 ドル= 100 円割れの円高水準が続きます。そして、2012 年9 月現在、再び1 ドル=80円割れという史上最高の円高水準になっています。

この状況を逆手にとって活用できる代表的なものが、外貨建ての生命保険です。外貨建ての生命保険とは、保険金の受け取りや保険料の支払いが外貨で設定される保険で、基本的な仕組みは一般的な円建ての保険と同じです。
商品:F 社 外貨(米国ドル)建て終身保険
契約者・受取人:法人
被保険者:社長(40歳)
保険金:10万ドル
保険期間:終身
保険料:9064 ドル/年額
累計保険料:4 万5318 ドル
支払期間:5 年

考え方としては、今の米ドル円相場の水準が将来ずっと永続的に続くとは考えにくいですから、円高水準にある可能性が高い向こう5 年間で保険料を払いきってしまうものとします。年額9064 ドルですから、5 年累計で4 万5318 ドル。このように、一定期間の間に保険料を払いきってしまうことを短期払いと言いますが、資金に余裕があり、かつこれから確実に円安水準に向かうと考える場合であれば、全期前納といって全期間分を前払いしてしまうやり方もあります。短期払いとの違いは、短期払いだとこの場合5 年間に渡って毎年の年額保険料を払い込むのに対して、全期前納は1 年目に5 年分をまとめて払いこんでしまうということです。

仮に全期前納するとして、契約1 年目に5 年分4 万5318 ドルを1 ドル80円のレートで前払いしてしまうと換算すると、4 万5318 ドル× 80 円ですから5 年累計で363 万円を払い込むことになります。あとは放っておけばよいのです。解約返戻率を確認しておきましょう。

【資料08】
L 社 外貨(米ドル)建て終身保険
解約返戻金の例
資料11
このケースの解約返戻金は、契約して10年目で100% を超えてさらにずっと上がっていきます。定期預金や国債などで運用するより、はるかに高い利回りです。しかもドル資産ですから、ドルの運用益とともに、解約時の為替差益も期待できます。解約もしくは死亡時に受け取る返戻金・保険金はドル建てですので、いったんドル口座に入金して、為替の様子を見ながら円に変えることができるのです。つまり、自らの意思で運用のコントロールが可能ということです。

財産の一部を外貨建て資産で持つことの詳細はここであえて言及しませんが、きわめて有用な資産活用です。そもそもF 社のこの商品は予定利率が3・0%と国内の一般的な終身保険の2 倍程度の利回り設定ですから、保険料に対する保険金の割合がかなり大きくなっています。この例では4 万5318 ドル払って、解約しなければいつか必ず10万ドルを受け取ることができるのですから、レバレッジは2 倍以上となる訳です。つまり、保険料が比較的割安ということです。この保険を活用するシーンとしては、どちらかというと資産運用や日本の財政に対するリスクヘッジという意味合いが強く、必ずしも保障重視ではない場合も考えられますが、万が一の時には大きな保険金が出るメリットもあります。

もちろん、さらに為替が円高に振れるリスクが無い訳ではありませんので、この商品を選ぶかどうかは契約者の判断になります。しかしながら、これからの日本がかかえる財政リスクを考えると、これからは外貨建ての資産をポートフォリオの一部に組み込むことも重要になってくるのではないでしょうか。

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