巷では保険見直しブーム

「生命保険の見直し」は今、ブームといっても過言ではないように思います。テレビや新聞などでネット生命保険や保険ショップの広告を見ない日はありませんし、東洋経済、ダイヤモンド、エコノミストなどの経済雑誌も年に数回は「保険の見直し特集」を組むほどです。

国税庁の『平成22年 民間給与実態統計調査結果』によると、わが国の民間企業で働くサラリーマンや役員、パート従業員の平成22年の平均年収(額面金額)は412 万円だそうです。平成に入って最も高かった平成9 年が467 万円ですから、その当時と比較すると平均年収は約12% も落ちています。そして、景気がただちに良くなるとはとても思えない今のご時勢で、今後確実に起こるとわかっていることは、社会保険料のアップや増税など。個人の資産や家計を取り巻く状況はますます厳しさを増していくといえます。

そのような中、「生命保険は一般サラリーマン家庭にとって、住宅の次に高い買い物」「家計の節約方法で一番良いのは、毎月支払う高額の固定費を見直すこと」「だから、保険のムダを省くことが固定費の見直しに繋がる」このようなうたい文句で、いま生命保険の見直しは盛んに行なわれています。

生命保険には「感覚的に高いか安いか、いいか悪いかの判断がしにくい」という特徴があります。前章にクルマの選び方の例を出しましたが、たとえば「トヨタが新型のハイブリッド車を150 万円を切る価格で新たに発売するらしい」「燃費はリッター35キロオーバーだ」「しかもセダン、RV の2 車種をラインナップ」という情報があれば、クルマ好きであれば具体的なイメージがすぐに思い描けるでしょう。要不要もすぐに判断できると思います。

ところが、生命保険だとそれが難しいのです。「A 生命が実損てん補型の新しい医療保険を発売するらしい」「先進医療特約は3000 万円までカバーされる」「終身タイプと10年定期タイプの2 種類をラインナップ」「いちばん安いタイプだと、保険料は
40歳の男性で月々わずか5980 円」といわれても、それが高いか安いか、自分に必要か不要かを判断するためには、あらかじめかなり専門的な判断基準を持っていない限り無理でしょう。では、普通の生活者でも覚えておくべき保険を見直すための判断基準とは何でしょう。たとえば、保険ショップに行ってよく売れているオススメを聞いて買えばいいのでしょうか? それとも、雑誌の保険ランキング1 位の商品を買えばいいのでしょうか? あるいは、馴染みの生保営業マンに意見を求めて提案してもらうのがいいのでしょうか?

「保険の見直し」というのは、売り手の考え方によっていかようにでも左右されてしまうということはすでに述べました。そして実はいま、それ以上の問題があるのです。それは、売り手の品質(提案力、マインドなど)にものすごくバラつきがあるということです。生命保険の売り手を正確には生命保険募集人といいますが、この人数に関するデータがあります。生保協会「2011 年版 生命保険の動向」のデータによると、生命保険会社の営業職員数と生命保険代理店の使用人数の推移が分かります。これによると、驚きの数値となります。約15年間の間に保険会社の営業職員数は3 分の2 になっていますが、代理店使用人数の数はなんと約6 倍以上になっており、売り手の数の合計は2 倍以上に増えています。この間、個人保険の市場規模は約1400 兆円から約900 兆円と3 分の2 に落ち込んでいるにも関わらずです。

【資料09】
生命保険業界の従事者数
資料09
要因としては、規制緩和により銀行や證券会社などの他業種での販売が認められるようになったことや保険ショップの躍進などがあげられますが、それにしてもものすごい増え方です。そして、これだけの増え方をしているわけですから、この中にはさまざまな人がいるわけです。A 保険会社で何回もトップセールスになったが1 社専売のやり方に限界を感じて乗合代理店に転身した人。B 保険会社で全く契約が取れなくて困り果てて保険ショップに転身した人。個人向けの保険販売を得意としている人。法人向けの保険を得意としている人。出自もキャリアもスキルレベルも全く違う人たちが同じように「保険コンサルタント」もしくは「ファイナンシャルプランナー」を名乗っています。

そして前述のとおり、ここ10年少々の間に保険会社は10社以上も増えています。会社が増えるということは、当然商品も増えています。全部の会社が扱う商品数でいったら、今売られているものだけでおそらく何百という単位になるでしょう。さらに、コンサルティングするということは、そこに既存契約つまり過去の商品分析なども加わるわけですから、相当幅広い知識を持ったコンサルタントにあたらないと的確なアドバイスが貰えない可能性があるのです。

「生命保険のムダを減らす」というのは、たしかに節約につながりそうで耳あたりのいいフレーズだと思います。でも、ちょっと待ってください。「保険料を安くする」って、実はとても簡単なことなのです。「現時点で最安値の保険をオススメする」これだけでいいのですから。

本当の意味で保険を見直すのであれば、繰り返しになりますが数多くの要素を検討する必要があります。 まず今後どのような保障がご自身に必要なのか。それは貯蓄では対応できないのか。これまで入っていた保険をどうするのか。最終的な費用対効果はどうなるのか。保険金や解約返戻金などにどのように税金が掛かってくるのか……など、複合的な観点で検討してから、はじめて具体的な保険商品を決めていくプロセスになるのです。そこを考慮せずに、いきなり「ムダをそぐには……」「この商品は……」などと闇雲に比べるだけの見直しは、全くのお門違いです。

第一章、第二章による『基礎知識編』はここまでです。次章からはさらに実践的な具体例を挙げながら、生命保険を活用するためのポイントや考え方をまとめていきます。ぜひお読みいただいて、賢明な生命保険活用にお役立てください。

カテゴリー: 業界裏事情……生命保険のからくりを知る パーマリンク