生命保険の保険料を経費で落とすことと、資産に計上することの違い

生命保険を会社でかける場合、まずは保険料を資産計上するということと、経費計上するということの意味合いをきちんとわきまえておく必要があります。生命保険の導入で最も大事なことは、保険金額(保障額)でも保険料(保険会社に払うコスト)でもないのです。むしろ真っ先に検討しなければならないのは、保障の期間の問題なのです。いつまでその保険の有効期間があるか、それをまず決める必要があります。

つまり、一生涯保険が必要ということは、死んだときに必ず保険金が入ってくることを前提としていますし、ある期間(たとえば役員在任期間)のみ保険があればいいという場合は、費用対効果で言えば、その期間のみを担保すれば十分なのですから、その期間を大きく上回るタイプの保険は全くの無駄使いということになりましょう。

例え主契約が終身保険でも、定期特約という保障が主契約に乗っかっているようであれば、(そのような契約が大変多いのですが)、全部の保険金額が一生涯続くのではなく、あくまで主契約の終身保険だけが一生涯で、特約部分は10年更新型の定期保険であれば、その10年で一旦おしまいになって、それを更新する形になります。定期保険の定期というのは、文字通り「期が定まっている」ということですので、10年定期は、10年間だけの保障。95歳定期は95歳までの保障ということです。

保険証書に終身保険と書いてあっても、特約が大きい場合は要注意です。終身部分が500万円で、10年の定期保険が特約でついている場合、一生涯保障されているのは500万円部分で、残りの部分は更新されていくというプランです。10年定期のような、更新型の定期だから何か問題があるということではありません。その方のリスクによって異なりますので、更新型だからだめということではなく、更新時に保険料がほぼ倍々で上がっていく点や、これ以上は更新できない年齢があるので(多くは80歳まで)、相続対策にはふさわしくないということなど、この特約の得失を踏まえておく必要があります。

つまり60歳までは大きな保障があったのに、それ以降は保障が極端に小さくなる保険で、それに気がつかないままで死亡すると大変なことになるわけです。

このことからも、保険は良し悪しということではなく、その方のニーズに合っているかどうかということが、最も大事なポイントということがお分かりいただけるかと思います。
終身保険と定期保険では、会社の経理処理上、大きな違いがあります。

一般的には、保障期間が終身(一生涯)で設定されたもの、さらに死亡時と満期時の保険金が同じという、半分貯金を兼ねた保険(養老保険)は、全額資産に計上する必要があります。片や、ある短い一定期間だけの掛け捨て型の定期保険は、全額損金計上型の保険といえます。これをどのように組み合わせるのがいいのか、実はそれが法人保険の保険戦略の最も重要な点です。

相続や事業承継は、「死んだ時に」問題が発生するわけですので、終身保険でなければ意味がありません。経費で保険を落とすことを優先して、期間の定めのある定期保険を導入してしまうと、例え保険期間が100歳まであっても、それを1日でも過ぎてしまうと、保障がゼロになってしまい、相続対策としては全く役に立たなくなってしまいます。相続対策の保険では、保険料を安く掛け捨てで行くという発想から、脱皮せねばなりません。

ただし、将来の役員退職金の引当て効果を狙う場合は、定期保険が効果的です。
つまり「短期の定期保険=全額経費で落とせる保険」イコール「掛け捨て保険」ではないということが重要な点です。中には全額経費処理が認められながら、途中で解約すると9割以上、年齢によっては100%以上戻ってくるといったタイプの死亡保険(例えば逓増定期保険)もあるのです。これらをうまく活用しますと、保険料の名目で全額経費処理していたものを、勇退時に解約することで、あたかも役員退職引当金と同じように機能させることが可能ということになります。

平たくいいますと、定期保険でキーマン保険として経営トップの死亡保障を得ながらも、何もなければ数年後に払い込んだ保険料の約9割を「解約返戻金」として、会社が営業外収益に計上でき、仮にその金額と同じものを「役員退職金」として経営トップに支給すると、保険加入期間に支払った保険料は、名目は保険料でも、実態は前倒しの役員退職金であった、ということになります。(この機能こそまさに退職給与引当金です)つまり保険料という全額経費計上できる勘定科目ではあるけど、これは保険会社に「外部留保」された一種の含み益という考え方です。退職引当金という会計上の言葉が難しいとすれば、準備金と言う風に言い換えればイメージしやすいかと思います。毎年払う保険料は、会計上は当然「保険料」として、経費で計上すべきものです。そしてこれを解約すると、掛け金の9割が戻ってきて、営業外収益となります。この収益をそのままにしておくと、ここで税金が課せられます。

それを相殺する形で役員退職金を払うということになりますと、当然プラスマイナスゼロですから、そこには課税の問題はないわけです。これこそまさに、保険料の名目で退職金の準備金を用意したということになります。

 

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