経営トップの死亡時保険金の合理的算定方法

経営トップが亡くなった時に、いったいどのようなこと(問題点)が発生するか

法人契約で社長に生命保険を掛けていない会社は、まず見当たらないといってもいいのではないかと思います。会社の経営トップである社長には、いわば船長のような役割があり、船長に万一があれば、たちまちその船は行く方向を見失ったり、船員の統率ができなくなったりするおそれがあるからです。

しかしその保険金額をどのように決めたかということになると、その多くが切れのよい数字でまとめたり、あまり根拠はないのだけど営業マンに勧められたまま決めてしまった、というケースも多いのではないでしょうか。自らきちんと数字を計算して決めたという場合でも、借入金が1億円あるから、保険金でそれを返済できるように1億円の保険に加入したというような、誤った計算根拠を元にしている場合も見受けられます。

保険金を考える前に、経営トップが亡くなった時に、いったいどのようなこと(問題点)が発生するかを想定してみる必要があります。主に次のような資金需要が発生するということが、一般的に言われています。

① 経営トップの死亡退職金
② 会社の借入金返済、買掛金支払い、場合によっては会社清算のための資金
③ 会社の経営の変化や悪化にともない退職する従業員への退職金
④ 経営トップの交代による売上減少、利益減少による資金不足の補填
⑤ 事業承継をスムーズにするために経営トップの自社株を購入する資金

これらを満たすような保険金額になっているかどうか、まずはその点を検証する必要があります。先ほどの例の、借入金1億円を返済するつもりで、1億円の保険に加入したとしても、実際には、保険金そのものも収益としてカウントされる場合があり、税引き後に使える資金は半分になってしまうということにもなりかねません。つまり、本来は2億円の保険金を設定しなければ、1億円のキャッシュフローは出ないので、保険金の設定にはこの点を考慮すべきだったということになるわけです。

理想形でいうなら、上記の①~⑤全てを計算して、それに合わせて保険金額を設定するということになりますが、ただ現実的には保険料の支払いという、現状の経営上の資金的なこともありますので、理論値の保険金額を設定しなければならないということではありません。また、借入金も社長が死亡した後、特に一括返済という形を取る必要もないのではないでしょうし、あくまでそのあたりのバランスをどうとるかといったことも重要です。

大事なことは、人任せにしない

まずは、最低限必要な額を、外部から調達する手段として、生命保険を考えるというのが、望まれるところではないかと思います。アバウトな方法ではありますが、例えば死亡退職金原資で1億円、経営の舵取りのための資金で1億円、税金分1億円、合計3億円といった積上げで決めていくのが、理に叶っているような気がします。

保険の種類によって保険料が当然異なりますので、保険料ベースでものを考えると、保険金額も相当動きます。第1段階として、前述のテーマで保険金額を決めると同時に、どの保険種類を選択するかということも次なる検討課題になります。そのためにも保険金が入ってきた時の、経理上の処理や、資金ニーズなどを、きちんと把握しているかどうかということが大事です。さらにいいますと、万一の時の死亡リスクだけではなく、生き残った時の資金ニーズ(例えば役員退職金など)をもその保険の機能として盛り込むか否か、といったテーマも出てきます。

いずれにしろ大事なことは、人任せにしない事につきます。保険を経営戦略として活用するというスタンスが、なによりも必要なことかと思います。

保険は金融商品であると同時に、財務戦略の一環です。会計や税務のみならず、商法民法などいろいろな要素が絡んできます。それを上手く保険設計に絡めていかないと、単に保険に加入しているというだけで、イザ何かあったときに、本当に役に立つものになっていないと、会社にとって大変な機会損失が起きてしまいます。

社外に投資するという意味では、銀行預金も保険会社の商品もなんら代わるところはありません。いずれもキャッシュフロー(資金)という、会社にとっては血液の役割を果します。その血液をどのように循環させていくか、簡単なようでも、実際には難しい問題がいろいろあります。

保険料の払い方によってはBS(貸借対照表)なのか、PL(損益計算書)なのか異なりますが、いずれにしろ保険料は保険会社に預けるものとお考え下さい。

その保険料が、死亡時には保険金となって(時として)何百倍にもなって戻ってきて、この時には会社に一気にお金が入ってきて、さまざまな法人の資金需要を賄うことができるようになります。と同時に、そのキャッシュは経理上、資産(預金)や収益として計上されます。資産に計上されるということは、一旦現預金を保険会社に預けたものが戻ってくるということですし、収益とされるものは保険の効果(差益)の部分か、もしくは一旦経費計上された保険料が解約返戻金となって戻ってきたということになります。この仕組みをご理解いただくと、法人で保険金を設定する根拠がかなりはっきりするかと思います。

言うなれば、保険は資金と利益の源泉ということで、このことをしっかり把握できれば、保険金の設定や保険種類の選択はかなり明確になりましょう。

 

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