法人におけるリスクマネージメントと生命保険

リスクファイナンス

リスクマネージメント(危機管理)とは、企業を取り巻くさまざまなリスクに対し、予め会社としての対応策を作っておいて、実際にリスクが発生した時のために備えることをいいます。その事前のプロセスとして、リスクを回避するための予防措置などを、通常リスクコントロールと言っています。つまり火事に備えて火災報知器や消火設備を設置したり、避難訓練をしたりすることです。

しかし、いくら予防を万全にしても、人の知恵で完全にそれを防ぐことはできません。火災が発生した後、当然建物や設備、商品などに大きな損害が発生しますが、これを回復させる為の資金が必要になります。いわば事後のリカバリープロセスとも言うべきでしょうか。この資金的経済的備えを担うのが、保険ということになり、リスクファイナンスという言葉に置き換えられます。大雑把に言いまして、リスクマネージメントというのは、この二つの面を併せて管理していく手法のことですが、保険はそのうちのリスクファイナンスの重要な要素になります。

資金的な損失というと、一般的には損害保険の領域の認識が強いわけですが、当然企業における経営トップや従業員の命もまた会社にとっては大きな財産であり、上記の例でいえば目的物を「火災」→「命」に置き換えたものが、生命保険ということになりましょう。リスクマネージメントの重要なファクターであるリスクファイナンスとは、自分で手当する場合と、それを外部に要請する場合があり、保険とは、その目的物が失われた時に発生する損失を、予めみんなでお金を出し合って、相互に助け合おうという人類が発明した叡智です。

こんな風に考えると、保険の機能はそれほど難しくはないでしょう。
要は、経済的な損失や、リカバーする為の費用を、予め想定しておいて、保険がかけられるものであれば、そうするだけのことです。

しかし、世の中のリスクに全て保険をかけたら、それこそお金がいくらあっても足りません。保険化すべきか、保険以外でカバーすべきか、または「その時は自前で処理する」という自家保険の発想も必要です。というのは、何が何でも保険で対処するということは、経済性の原理から見て不適当だからです。
リスクを全部保険に置き換えられないので、発生した時には自腹で対応しようということも、当然必要です。全ては経済合理性に則って判断されます。100のリスクを回避する費用が年間25かかるとしたら、4年に1回そのリスクが発生するかどうかの確率論と同じことなので、100というリスクが会社にとって致命的かどうかの判断によります。このあたりが保険を導入するかどうかの、最も重要なポイントとなります。
一定のリスク発生の可能性を確率で補足し、その許容度に応じて、個別判断せざるを得ないと思われます。つまり、保険料と保障(補償)内容のバランスが、契約者にとって効果有りとみなされるか、いやそんなに高い保険料では割が合わないと思うか、どちらなのかによって保険化すべきか否かが決まります。

全体のリスクとそこにある保険全部で比較検討する

自家保険というのは、いわば割が合わないと判断して、その時はその時と居直った姿ということでもあります。ただ、ことはそう簡単ではないので、単一の保険の話だけではなく、全体の中で捉える必要があります。例えば、社長にかけた生命保険が時として、場合によってはセクハラ保険として使えるといったことも出てきますので、全体のリスクとそこにある保険全部で比較検討するというようなこともあります。

言葉を換えると、リスクをどう捉えるかということ次第です。分かりやすくいえば、そんなことはめったに起きないよ、とか、起きてもたいしたことはない、というような場合は、何もわざわざお金を出して保険に加入しておくことはないし、セクハラが起きて損害賠償責任が発生したら、社長の生命保険を一つ解約して、そのお金や利益を損失に当てればいい、と思えばセクハラ保険に入らなくても済むというようなことです。

全く予期し得ない事態が起きても、損保ではなく生保を解約して、解約益と資金を会社に一旦取り込むことで、あたかも予期し得ないリスクのための損害保険に加入していたのと同じように対処できるなんて、大変頭のよい手法といえましょう。

このような保険の融通性ということは、それほど一般的ではないものの、お金に色がついていないの例えどおり、会社に還流できる資金と利益(保険金や解約返戻金)を、任意に利用することは、財務リスク回避の考え方の第一歩といわねばなりません。

とはいえ、きちんと保険で対応していなければいけない場合と、そうしなくても汎用性の高い保険と、どうやって分けたらいいのかという疑問が残ります。
リスクが特にはっきりしているもの。例えば、火災保険や自動車保険は文字通りその目的物のための保険で、かつ影響度が甚大なものは、当然加入すべきものです。
つまり広く普及している保険は、それなりに導入すべき根拠があるということになりましょうし、あまり聞いたこともないような特殊な保険やリスクだけを、直感的に振り分けていけばいいと思われます。

リスクマネージメントにおける保険の役割は、今後その重要性をますます増していくと思われます。単に、以前から掛けているといった、過去の延長線で保険を捉えるのではなく、中長期の経営戦略にきちんとリンクさせる形で、リスク管理や保険化を図ることが望まれます。
 

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