4種類の税軽減方法と、損出し・益出しのコントロール

「保険の税務メリットは節税ではない、結局は課税の先送りである」ということをお話ししましたが、税制上のルールをうまく使えば結果として税軽減を実現することは可能です。ただし本当の意味で税軽減できる技はいくつもあるわけではなく、基本的には次の4 種類を組み合わせて使います。

・非課税枠、控除枠を利用する
・毎年使えるものは毎年使う
・税率の低い区分へシフトする
・課税対象者や年度など分散を図る

今後の国の政策にも影響を受ける事柄ですが、国際社会における我が国の法人税率の高さはかねてから指摘されており、長期的には実効税率の低減化が進むと思われます。実効税率の低減化が進むと、国としての税収は当然、間接税(消費税等)や資産課税の強化(所得税、贈与税、相続税の税率アップ)につながるおそれがあります。

平成24年7月現在、課税所得1800万円を超える所得者は、所得税率40%、住民税10%もの税率です。これだけの税率ですと、課税所得1800万円以上になる社長の役員報酬をいくら上げたとしても、手取りは思うように増えません。それなら役員報酬を増やすよりも、その分を積み立てておいて退職金として受け取る方がトータルではずっと手取りを増やすことができます。

というのも、退職金に掛かる税金を計算する際には次のような決まりがあります。

● 他の所得と合算されない(分離課税)
● 勤続年数に応じた基礎控除があり、長ければ長いほど非課税枠が増える
● 2分の1課税になる

退職金にはこのような優遇制度がありますから、給与所得から退職所得に所得の区分を変えるだけで、税負担を軽くすることができるのです。

また、保険に加入する際に入り方を工夫することで、税引き後の手取りを増やすこともできます。

被保険者と契約者が社長、受取人が子どもの場合には、保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象になります。この場合の保険金には、法定相続人× 500万円の基礎控除があるものの、残った部分は相続財産として課税対象になります。相続税の最高税率は50%。他に相続財産がたくさんあって最高税率が適用されれば、非常に多くの資産が税金で持っていかれる計算です。しかも、相続が発生してから原則10か月以内に現金で納税する必要があるのです。

そこで、被保険者を社長、契約者と受取人を子どもに変えることで、保険金は相続税ではなく一時所得の課税対象になります。一時所得の計算をする際には次のような決まりがあります。

●50万円の非課税枠が使える
●2分の1課税になる

相続税と分けてこうした優遇制度を活用することで、これまた税負担を軽くできます。しかも保険金を一時金で貰わずに、部分解約などで毎年少しずつ受け取るように工夫すると、50万円の非課税枠は毎年使うことができます。このような前提知識があれば、親が毎年子どもなどに一定額を贈与して、それを元手に保険に入るというプランが作れます。

贈与税には1年間で110万円の非課税枠が認められており、加えて200万円までは10%の税率となっています。毎年少しずつ贈与をし続ければ、将来の相続財産を減らすことができます。贈与は子どもだけでなく、子どもの配偶者や孫にもできるので、贈与の対象を広げることでさらに効果的に相続財産を減らすことができるのです。保険を使った提案には、これらのルールを活用した技を駆使します。

さて、ここまで保険を活用した税負担を軽減させる方法の一例をご説明しましたが、生命保険を使って利益・損益を調整する技も存在するのです。もしも決算の内容が悪かったために、融資を受けられなかったり、新規の取引を断られたりしたら、安定した経営は望めません。経営者の皆さんは、毎年の決算が黒字になるよう全力で取り組んでおられることでしょう。しかし、たとえ事業が順調でも会社がさらに発展するためには、大きな支出を伴うこともあるはずです。生産性アップのために最新の機械を購入した年には経費が膨らみますし、優秀な人材をスカウトしたために人件費がかさんだりすることもあるでしょう。毎年黒字にするということは、口で言うほどたやすいことではありません。

そこでぜひ活用すべきなのが、保険の含み益です。前述しましたが、一時的な損失と保険の含み益をぶつけることで、相殺しあって赤字を免れることができます。

保険の含み益は、保険料が経費に計上できるかできないかにかかわらず、解約返戻金が帳簿上の保険資産を上回れば生まれます。保険による利益が表面化するのは、解約した時ばかりでなく、法人契約を個人に名義書き換えしたときや、払い済み(保険料払い込みを停止し、その時点の解約返戻金で買える一時払いの生命保険に変更すること)という変更をする方法もあるのです。

逆に、保険を活用して意図的に損を出すこともできます。先ほどとは全く逆の考え方で、解約返戻金が帳簿上の保険資産を下回れば含み損が表に出ます。会社経営では、この含み損が役に立つことがあることも付け足しておきましょう。たとえば、土地を売却した場合など一時的に大きな利益が出たとします。会社にとって利益があるのは喜ばしいことなのですが、黒字になればその分、納税額もアップします。そこで保険の含み損を表面化させ、利益をコントロールすることも可能です。

保険は、保険料を支払わなければ契約を続けることができません。「失効」といって保険契約が途切れてしまいます。ただし、この時点では解約ではないので解約返戻金は支払われません。このままの状態で放っておき、必要な時になったら保険会社に連絡を入れ、解約益を取りだすことができます(保険会社・保険種類によって年数などの条件が異なります)。これが「復活」です。復活する際には、失効期間中の保険料をまとめて支払います。よって、このタイミングで一気に3年分の費用が発生します。復活時には健康状態の告知が必要ですが、それさえクリアすれば失効や復活をすることはできますし、保険をいつ解約するかも経営者の意思で任意に判断できます。つまり、結果的に契約者の裁量で利益や損失を調整できることになるのです。

 

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