裏付けデータの信ぴょう性

2人に1人はがんになる時代……。みなさんは、そんなフレーズを聞いたことはありませんか?

人により部位は異なりますが、毎年のように芸能人や著名人が相次いでがんになったり、がんを原因として亡くなっています。
50代の男性歌手だけをとってみても、2年前にはサザンオールスターズの桑田佳祐さんが食道ガンを発症されましたし、3年前にはロックスターの忌野清志郎さんがガン性リンパ管症という病気で亡くなりました。そのようなニュースが報道されるたび、我が家もがん家系だし、ひとごとじゃない……、そう感じられる方も多いのではないでしょうか。

「2人に1人はがんになる時代」はほんと?

わが国は日本人男性の平均寿命が79歳、女性にいたっては86歳という世界屈指の長寿国家です。そのことから、いまや50代はこの時代、まだまだ家計を担う働き盛りの年代と言えるでしょう。そのような年代で、がんになってしまうリスク。その対策として、保険の世界には「がん保険」という商品があります。多くの保険会社がラインナップする、主力級といえる商品のひとつです。

その「がん保険」のパンフレットなどで登場するフレーズが、冒頭の「2人に1人はがんになる時代」というわけです。果たして本当にそうなのか?そして、結論として保険が必要、となるのかどうか?

ここでは、「がん保険の必要性」および「裏づけデータ」について検証してみたいと思います。

「2人に1人はがんになる時代」というのはウソでもなんでもなく、統計に基づく事実です。国立がん研究センターがまとめた「がんの統計(2011年度)」によると、
●男性の54・9%、女性の41・6%はがんになる
●男性の26・1%、女性の15・9%はがんにより死亡する
ことが明記されています。

たしかに高い数値です。でも、年齢別のがん罹患リスクやがんによる死亡リスクをグラフにすると、また別の見方をすることができます。

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いかがですか。年齢層別のグラフにするとよくわかるのですが、がんはいわば「老人病」。加齢によって罹患リスク、死亡リスクが高まる病気であることが、統計データを見るとよく分かります。

たしかに、生涯でいえば「ほぼ2人に1人ががんになる」ということは言えますが、59歳までにがんになる方の割合を見ると、男性で7・5%、女性で9・8%に過ぎないのです。

そもそも万一に備えるのが生命保険


次に「長期の治療が必要となったときにどれくらいの自己負担が必要となるのか?」を考えてみましょう。健康保険の区分が一般の方(月額の額面報酬が51万5000円未満)ががんになって、長期治療をした場合について計算してみます。

1 か月あたり100万円の治療費が掛かったとすると、健康保険で3割負担ですから30万円となります。それに加えて、前述した高額療養費制度が使えます。

この場合の計算式は、8万100円+(総医療費マイナス26万7000円)× 1%(1年に4回目以上の場合は限度額4万4000円)となります。

ということは、8万100円+(100万円マイナス26万7000円)× 1%= 8万7430円。

この金額が、実際の1か月の自己負担限度額となります。また、1年間に高額療養費制度が4回該当する場合が続くと、1か月の負担は4万4400円で済みます。

つまり、治療費100万円が12か月続いた場合。
1〜3か月目まで
3×8万7430円=26万2290円
4〜12か月目まで
9×4万4400円=39万9600円

1年間の合計は66万1890円となります。さらに治療が続いた場合、2年目以後は12×4万4400円=53万2800円。これが、高額療養費制度をフル活用した場合の計算になります。

がん治療には法外な費用が掛かる、と思われている方も多いものと思われますが、公的保険が適用される場合だと、これだけの自己負担で済みます。

ただし、忘れてはならないのは必要なのは治療費だけではないということです。ここまでの費用は長期の治療に掛かる費用ですが、一般的にはこれだけの長期治療になると、収入が途切れる、または減少するということになるでしょう。治療の間の生活費、教育費なども手当てしておく必要があります。

また、何年分の治療費を考えるのかということも頭にいれておく必要がありますし、治療によっては公的保険の範囲外(先進医療といいます)の費用が必要になる場合もあります。稀なケースではありますが、特に高額な先進医療を受ける場合だと40日程度の入院で300万円以上の保険のきかない治療費が発生するケースも存在します。

このような経済的な負担に備えるために、真っ先に考えるべきは「貯蓄」でしょう。実は、前述の高額療養費制度は、基本的にあとから還付される形式をとっているため、自治体などに事前申請をしていたケースを除いては、還付は3か月後ぐらいになります。ということは、前述の例だと100万円×3割負担×3か月=90万円は身銭を切って支払う必要があるのです。

次の手段として、がんと確定診断されたときに給付金が出たり、入院給付金や手術給付金などが出る「がん保険」が考えられます。がんと確定診断されたらすぐに100万円が支払われる、という保障内容のものや、高額な先進医療を受ける場合に500万円〜2000万円くらいまでを保障する(先進医療特約といいます)、というものなどがあります。500万円以上もの治療費が掛かるケースはまさに万一の事態でしょうが、そもそも万一に備えるのが生命保険であると考えるならば、これは一考する価値があるでしょう。

がん保険

ではがん保険に加入する場合には、総額でいったいいくら掛かるのか。これも実例を挙げます。

40歳男性
がん診断一時金:100万円
入院給付金:1万円
保険期間:終身
払込期間:60歳まで
月額保険料:5980円
累計保険料:133万5200円

この商品は、経済誌の保険特集などでも、よくプロがオススメする保険ランキングの上位に紹介されるがん保険です。保険期間は終身有効ですから、133万円払えば一生涯のがん対策は一応できると言えます。あとは、この保険料を高いと思うか、それとも安心のために買っておくと考えるかといった判断です。貯蓄があるから不要、という判断ももちろんありです。ここまで考えて、初めて保険の必要性が検討できるといえると思います。

がんになるのが2人に1人というフレーズはたしかに統計で裏付けられている事実です。しかし統計データからの引用は断片的な情報にすぎません。安易にキャッチコピーに踊らされず、がん罹患のリスクは実際どれくらいあって、費用はいくら掛かるのか。そしてその費用は自分で用意できるのか。できないのならば保険を検討すべきですが、その保険はいくら掛かってどのような保障内容のものが望ましいのか。このような順番で必要性を考えていけば、キャッチコピーに惑わされずに、ご自身にとって
本当に必要なリスク対策ができるのではないでしょうか。

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