商品の価値より売る人の価値?

欲しい車があったとしたら、いったい何をするでしょう?

あなたが今から、新車でクルマを買うとしましょう。そのために、いったい何をするでしょうか。

セダンがほしいのか、ワンボックスがほしいのか。はたまた、ハイブリッド車がほしいのか。まずこのあたりを決めますよね。次にだいたいの車種を決めて、予算、年式、色、排気量などなど。買いたいクルマの詳細を絞り込んでいくのではないでしょうか。

この過程でやることは何でしょうか?

おそらくですが、今でしたらネットで情報を取りますよね。パンフレットなどの資料請求をして、そのあと実際に説明を聞きに販売店にも行くでしょう。複数の見積もりや試乗をするために、何件かを比較するということもほとんどの人はやると思います。

結果として条件に合うクルマが見つかって、そのクルマを買うことにしました。どういう要因で買うのでしょう?

条件として何が一番というのは買う人によって違うでしょうが、「そのクルマの商品価値が満足いくもので、予算にも収まるものだった」ということは共通して言えるのではないでしょうか。

クルマや家といった目に見えるものについては、誰でも多かれ少なかれ「こういうのがいい」という好みがあるでしょうし、イメージがわきやすいはずです。でも、保険は目に見えない商品ですから、ここが消費者にとって一番難しいところなのです。

ここまでさまざまな角度から生命保険について書いてきました。読者に理解してもらいたいことをひとことでいえば「保険もクルマと同じように、商品性主体で購入されるべき」ということなのです。場合によってはクルマよりはるかに高い買い物になるにも関わらず、「商品価値が満足いくものなのかどうかもわからないし、トータルでいくら掛かるものなのかもわからない」という状態で買ってしまう。そんな現状の保険購買のあり方は明らかにおかしいと考えています。

これは消費者側の意識の低さにも問題がありますが、今に至ってもメーカーである生命保険会社側がイメージ戦略主体で、単純な商品比較を避けてきたことが大きな原因だと思います。

「安心感」や「親しみやすさ」をアピールするCM

たとえば、ある保険会社のCMでは、必ずといっていいほど、朗らかで知的な、身だしなみのいい男性が出てきます。この男性が顧客と接しているところが流れるわけですが、たとえばCMが4種類あるとして、作りはこんなパターンです。

1番目に若い夫婦のライフプランの相談を聞いているところ。

2番目にこの夫婦に子どもが産まれたことをともに喜んでいるところ。

3番目に子どもの成長に一緒になって向き合っているところ。

最後に、夫との死別により未亡人となった妻の保険金請求手続きを手助けしているところ。

つまり、お客様のさまざまなライフステージの局面にスポットを当てて、消費者に「われわれはお客様の人生の伴走者です」というイメージを植えつけるようなCMです。これは専門職の男性営業マンによる販売が主力の会社の例ですが、いわゆる「生保レディ」による販売が中心の会社でも、あまり大差はありません。「安心感」や「親しみやすさ」をアピールするCMがほとんどです。商品の保障内容の充実さや、費用の安さなどを一番に売り込むCMはネット生保は別にして、例外でしょう。

こういったCM で端的にわかることは、つまり保険会社は商品の価値をセールスポイントにして売ろうとはしていないのです。もっとも、商品の説明をしてもしょせん消費者にはわからないだろうという判断もあるのかもしれません。もしそうだとしたら、かなり消費者をバカにした話しです。

他の高額商品を買うときに「信頼できる相手から買いたい」なんて普通の要求でしょう。むしろ、クルマのような高額な買い物だったら、「優秀で信頼できる営業マンからじゃないと買わない」という風に思いませんか。そこは自動車メーカーは当たり前だと思ってますから、日産自動車はCMで絶対に「セールスマンバリュー」を標榜したりしません。日産車ならではの「商品の価値」を売り込むわけです。ところが、生命保険のCMだと「商品の価値より売る人の価値」になるのです。実に不思議な現象です。「消費者にとって本当にいい商品(もちろん生命保険会社も利益が出せる)が分かりやすくたくさん売れる」というほうが、生命保険会社にとっても消費者にとっても有益な話であるはずです。そのためには、消費者が「いい商品」を知る機会が必要です。最終的には消費者が誰でも自分自身で、最適な生命保険を選べるような購買スタイルが普及するべきだと思います。生命保険の代理店業務に携わる人間として、これができれば本当に本望です。
 

カテゴリー: 業界裏事情……生命保険のからくりを知る パーマリンク