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法人保険の活用法 その5 ドル建て終身保険

生命保険には、市場の状況により有利になる商品もあれば、不利になる商品もあります。たとえば1990 年ごろの予定利率は5%を超えていましたから、貯蓄性の高い終身保険や養老保険などは、今と比べて保険料は安く、解約返戻金ははるかに貯まりやすかったのです。それに比べて、2012 年の予定利率はだいたい1%〜1・5%程度です。現状のように低金利時代が続くと、資産運用の意味でも国内の生命保険の活用は不利になったといえます。

では消費者にとって有利になった指標はないのかというと、全くないわけではありません。外国為替(米ドル円相場)の推移をみてみましょう。90年代前半から、米ドル円相場は一貫して大幅に円高に振れ続けました。90年1 月に1 ドル= 140 円台だっ
たのが、円高が続いて94年には1 ドル= 100 円割れを起こします。そして1995 年4 月19 日、米ドル円相場は当時の史上最高値79円75銭と、瞬間的ではありましたが80円割れという異常事態を起こしました。その後、1995 年〜2007 年までは、1 ドル= 100 円以上の円安水準で推移していましたが、金融危機(俗に言うリーマンショック)が起きた2008 年9 月以降は、1 ドル= 100 円割れの円高水準が続きます。そして、2012 年9 月現在、再び1 ドル=80円割れという史上最高の円高水準になっています。

この状況を逆手にとって活用できる代表的なものが、外貨建ての生命保険です。外貨建ての生命保険とは、保険金の受け取りや保険料の支払いが外貨で設定される保険で、基本的な仕組みは一般的な円建ての保険と同じです。
商品:F 社 外貨(米国ドル)建て終身保険
契約者・受取人:法人
被保険者:社長(40歳)
保険金:10万ドル
保険期間:終身
保険料:9064 ドル/年額
累計保険料:4 万5318 ドル
支払期間:5 年

考え方としては、今の米ドル円相場の水準が将来ずっと永続的に続くとは考えにくいですから、円高水準にある可能性が高い向こう5 年間で保険料を払いきってしまうものとします。年額9064 ドルですから、5 年累計で4 万5318 ドル。このように、一定期間の間に保険料を払いきってしまうことを短期払いと言いますが、資金に余裕があり、かつこれから確実に円安水準に向かうと考える場合であれば、全期前納といって全期間分を前払いしてしまうやり方もあります。短期払いとの違いは、短期払いだとこの場合5 年間に渡って毎年の年額保険料を払い込むのに対して、全期前納は1 年目に5 年分をまとめて払いこんでしまうということです。

仮に全期前納するとして、契約1 年目に5 年分4 万5318 ドルを1 ドル80円のレートで前払いしてしまうと換算すると、4 万5318 ドル× 80 円ですから5 年累計で363 万円を払い込むことになります。あとは放っておけばよいのです。解約返戻率を確認しておきましょう。

【資料08】
L 社 外貨(米ドル)建て終身保険
解約返戻金の例
資料11
このケースの解約返戻金は、契約して10年目で100% を超えてさらにずっと上がっていきます。定期預金や国債などで運用するより、はるかに高い利回りです。しかもドル資産ですから、ドルの運用益とともに、解約時の為替差益も期待できます。解約もしくは死亡時に受け取る返戻金・保険金はドル建てですので、いったんドル口座に入金して、為替の様子を見ながら円に変えることができるのです。つまり、自らの意思で運用のコントロールが可能ということです。

財産の一部を外貨建て資産で持つことの詳細はここであえて言及しませんが、きわめて有用な資産活用です。そもそもF 社のこの商品は予定利率が3・0%と国内の一般的な終身保険の2 倍程度の利回り設定ですから、保険料に対する保険金の割合がかなり大きくなっています。この例では4 万5318 ドル払って、解約しなければいつか必ず10万ドルを受け取ることができるのですから、レバレッジは2 倍以上となる訳です。つまり、保険料が比較的割安ということです。この保険を活用するシーンとしては、どちらかというと資産運用や日本の財政に対するリスクヘッジという意味合いが強く、必ずしも保障重視ではない場合も考えられますが、万が一の時には大きな保険金が出るメリットもあります。

もちろん、さらに為替が円高に振れるリスクが無い訳ではありませんので、この商品を選ぶかどうかは契約者の判断になります。しかしながら、これからの日本がかかえる財政リスクを考えると、これからは外貨建ての資産をポートフォリオの一部に組み込むことも重要になってくるのではないでしょうか。

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法人保険の活用法 その4 終身保険

ここまで紹介してきた3 つのタイプの保険の活用法に共通することは、「支払った保険料の2 分の1 を費用で落とすことができる」「一定期間経過後に返戻率・返戻金が非常に高くなるので、保障を取りながら退職金準備ができる」ということでした。次に紹介するのは、今までと全く異なる法人保険の使い方です。国の借金が1000 兆円と言われる日本は、これからは間違いなく資産税(所得税・相続税・贈与税)が強化される方向にあります。中小企業にとっては次の世代に相続・事業承継する際、たとえば自社株などに多額の税金が課せられることになり、代替わりが経営にとって最大のリスク要因になりかねません。とくに、同族のオーナー企業にとっては、自社株を後継者に残すのは事業承継の大前提です。ただその場合、残る相続人にも公平に他の遺産を相続させないと、不公平感からトラブルを招く『争族問題』となる可能性があります。

杞憂に感じられるかもしれませんが、自社株や不動産のように、分けられない、あるいは流動性の低い相続財産を、相続人に平等に分けるのは思った以上に骨が折れます。実際にそうしたケースで、遺産相続を遺族間で争う問題が起きてしまうのはあり得ることなのです。このような問題を解決する手段として使われるのが、代償分割という方法です。代償分割とは、資産価値が高く現金化できない財産(自社株など)を相続した相続人が、他の相続人に対して本来の取り分に応じた現金を渡すことで公平化を図る方法です。たとえば自社株は事業承継する長子が集中して相続して、長子が個人的な資産からそれに見合う現金を次子等の相続人に渡すといったやり方です。

この方法だけで問題が解決できる状況であれば話は簡単ですが、実際には長子が十分な個人資産を持っているかどうかという懸念もあれば、自社株の評価が思いのほか高くなってスムーズな遺産分割協議ができなくなってしまうのではという懸念もあります。
そこで、お勧めなのが生前贈与をしてしまうことです。生前贈与とは、オーナー社長(父親とします)が在命中に、法定相続人に毎年一定額を贈与して、それぞれの取り分を確実に渡してしまうことです。長男が自社株を100%相続する代わりに、父親が娘ふたり(長女、次女とします)に財産を毎年贈与していく、というようなイメージです。遺言書にもこれを明記して、長女と次女には相続発生時に遺留分の放棄をしてもらうことにします。事前に財産を分けてもらう代わりに、自社株という相続財産には一切権利を主張しないという約束ごとを決めるのです。家族間とはいえ、一種の取引のようなものですね。

ここに生命保険を絡めると、面白いスキームを作ることができます。例を出します。

オーナー社長(父親):50歳
次期社長(長男):25歳
長女:20歳
次女:18歳

次期社長予定の長男は、今は父親のもとで修業しています。一方の父親は10年後に代替わりを考えていて、ゆくゆくは長男に100%自社株を譲り渡すものとします。父親は10年後に不公平にならないよう、長女と次女には現金で資産を渡すことを考えました。

【資料07】
110 万円超の贈与税
資料10
さて、父親が現金を長女や次女に渡す場合には、贈与税の課税対象になります。贈与税には基礎控除があり、110 万円までは非課税です。したがって、毎年110 万円ずつを長女と次女にそれぞれ渡すというのは、無税で父親の相続財産を次の世代に渡すことができるという大きなメリットがあるのです。これだけでも、将来発生するであろう相続税を減らす効果があるのですが、贈与した110 万円を原資に生命保険を掛けると、このようになります。

商品:終身保険
契約者・受取人:長女・次女(ふたりとも専業主婦・課税所得0 円)
被保険者:父親(50歳)
保険金:1700 万円
保険期間:終身
保険料:108 万6929 円/年額
累計保険料:1086 万円
支払期間:10年

このやり方は、父親が毎年贈与する110 万円を長女と次女に直接現金で渡すのではなく、年払保険料がほぼ110 万円になるような保険に入ります。契約者・受取人は長女と次女で、被保険者は父親とします。したがって、この契約は法人契約ではなく個人契約です。具体的には、新たに長女名義、次女名義の口座に毎年110 万円を振り込み、自動的にほぼ同額の保険料が引き落とされるようにするのです。人はいつか必ず死にます。このとき生命保険に入っていれば保険金が出るわけですが、このような加入形式であれば、保険金に課税されるのは所得税の「一時所得」という区分になります。実はこの区分は課税所得が2 分の1 になるという恩典があるのです。ではこのスキームで具体的にどうなるでしょうか? 比較してみましょう。

① 何も手を打たない場合
贈与しなかったお金
110 万円× 2 人×10年= 2200 万円
相続税(MAX の50% とした場合)2200 万円×50% = 1100 万円
合計(手残り金額)
2200 万円−1100 万円= 1100 万円

② 生前贈与のみ使った場合
贈与したお金110 万円× 2 人×10年= 2200 万円
贈与税
0 円
合計(手残り金額)
2200 万円−0 円= 2200 万円

③ 生前贈与と終身保険を使った場合
保険金
1700 万円× 2 人= 3400 万円
贈与税
0 円
保険金に掛かる所得税
(3400 万円−1086 万円× 2 人分の契約)×1 / 2 ※一時所得による課税対象額= 614 万円
課税所得が0 円の場合
614 万円× 5% =31万円
合計(手残り金額)
3400 万円−31万円 = 3369 万円

① のように何も手を打たなかったら、手残りは1100 万円です。②のように生前贈与を活用し、10 年に渡って無税110 万円を娘ふたりに贈与し続ければ、手残りは2200 万円と倍になります。③のように、さらにここに生命保険のスキームを絡めると、手残りは実に3369 万円となります。何もしなかった場合の3 倍のお金を残せるのです。

お分かりのように、このプランは相続人が多ければ多いほど無税で贈与できるため有利です。ただし、贈与するための資金が必要になりますので、そこは要注意です。この場合、支払保険料が1 契約あたり1086 万円で2契約ですから、2172 万円です。それに対してリターンは3369 万円です。この差額、「3369 万円−2172 万円= 1197 万円」が保険化した効果となります。

スムーズな遺産相続というばかりでなく、長女や次女からしたら、父親が亡くなった場合にはひとりあたり3369 万円÷ 2 = 1684・5 万円を受け取れる権利が得られるのです。投資対効果の意味でも、父親が1086 万円払って娘ひとりあたりが1684・5 万円もらえるわけですから、無税で1・5 倍のリターンです。次の世代に資産を残す意味では、価値のある投資ではないでしょうか。さらに、波及的な効果もあります。生前贈与というスキームで若い次の世代に現預金を渡してしまうと、どうしても「無駄使い」のリスクがあります。この点、保険化すれば父親の死によってはじめて保険金が払われますから、無駄遣い防止の意味でも有効です。また、歳を取った父親が大切にされるという間接的な効果があるかもしれません。

こうした相続・事業承継で生命保険を活用するスキームは、実は今とても潜在ニーズがある分野です。ここで説明したプランは一例ですが、入口(予算)と出口(貰いたい遺産額)が具体的であればあるほど、ユニークなプランが提案できるからです。これからの時代に自分の財産を放っておいたら、没後、自動的に国に搾取されて終わります。財産を次世代、もしくはその次に有効に活用してもらうスキームを考えるとき、生命保険は有効に活用できる手段のひとつなのです。

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法人保険の活用法 その3 法人がん保険

次に、法人がん保険について説明します。法人がん保険を利用したプランとしては、社長の勇退退職金プランと社員の福利厚生プランの2 つのケースが考えられます。どちらのプランでも、「契約者・受取人:法人」「被保険者:社長または社員」として加入します。 すでに個人向けのがん保険に入っている、という方も多いと思います。個人向けと法人向けの違いはいろいろあるのですが、個人向けのがん保険だと給付金は当然個人の指定口座に振り込まれますが、法人がん保険の給付金はいったん会社に支払われます。会社はそれをもとに社長もしくは社員にお見舞い金を支払うという流れになります。日本人の死亡原因の3 割はがんと言われている現在、万が一のがんに対する福利厚生があれば、社員も安心して仕事に打ち込めますし、ロイヤリティの形成にも役立ちます。

法人がん保険の返戻率は意外と高く、とくに若い間に加入した場合は将来的に100%近くになるものもあり、解約返戻金を社長や社員の退職金としても活用できます。役員ではない一般社員の場合、中途退職のリスクが気に掛かるところですが、法人がん保険は商品によっては早い時期から返戻率が高くなるものもあるので、中途退職者が多い会社では、こちらのタイプの保険を選ぶとよいでしょう。仮に被保険者である45 歳の社長が、国内で最もパフォーマンスが良い保険会社に引受上限の金額で加入するとした
場合、このようになります。

商品:法人がん保険 L 社
契約者・受取人:法人
被保険者:社長(45歳)
保障内容:入院日額6 万円ほか
保険期間:終身
保険料:382 万8480 円/年額

まず保障内容ですが、これが個人向けがん保険とは段違いです。個人向けのがん保険は、がん入院日額が5000 円から2 万円ほどで、がん診断給付金(がん罹患が確定したら貰える一時金)はその100 倍というものが一般的です。たとえば、L 社の法人向けが
ん保険にMAX 金額で入ると、その保障内容は下の表【資料07】のようになります。

【資料07】
L 社のがん保険保障内容例
資料07
がん入院日額6 万円、がん診断給付金1200 万円、さらにがん死亡保険金が6000 万円もついています。社長が若くしてがんに掛かって倒れてしまうというのは会社にとって一大事ですから、これだけの保障が付いているわけです。

次に積立部分(次ページ【資料08】参照)ですが、この保険に加入すると解約返戻率は5 年ほどで約85%に達し、その後ずっと30年以上にわたって上昇していくのです。前述した逓増定期保険を使った退職金準備のプランのデメリットは、返戻率がピークを付けている期間が2 年〜4年と短く、この間に退職する必要があることでした。一方この例では60歳以降、90%を超えた返戻率が長く続きますから、「辞め時を正確に予測できない」という経営者に向いているプランとも言えます。

【資料08】
L 社がん保険 解約返戻金の推移例
資料08
少し視点を広げておくと、退職金の準備には生命保険を利用するやり方の他にも、確定拠出年金や中小企業退職金共済などの利用も考えられます。全額か部分的かはさておき費用化できるのは共通していますが、大きく違うのが掛け金の取り扱いです。

繰り返しになりますが、生命保険の場合は支払った保険料の一部(解約返戻金)が簿外資産として保険会社に積み立てられていますから、会社に何かあった場合にはいつでも経営判断で現金化することができます。これに対し、確定拠出年金や中小企業退職金共済だと、いったん拠出したら、例え懲戒免職になった社員であろうが拠出金を戻すことはできません。その一方、社員からすれば確定拠出年金や中小企業退職金共済であれば、将来もらえる退職金を自分の運用で増やすチャンスがあります。退職金をどうやって用立てるかのプランは、このようにそれぞれ特徴がありますから、メリット、デメリットを踏まえて検討すべきといえます。

さて、法人がん保険に話を戻します。先に説明した長期定期保険、逓増定期保険と同様に、法人がん保険も税制上、保険料の2 分の1 を損金処理することが認められています。では、法人がん保険はこれら2 種類の保険と根本的にどこが違うかというと、保障
内容が「被保険者の死亡」ではなく、「被保険者のがん罹患、手術、死亡等」であることです。死亡保障性の商品は、一般的に被保険者の健康状態に規定値を超える異常があると、保険会社の審査の結果、契約を引き受けられないと判断されます(保険の専門用語で「謝絶」といいます)。法人がん保険にももちろん審査はあるのですが、死亡保障性の商品と比べるとかなり緩やかです。

一般的に死亡保障性の商品の告知事項は、保険金額と被保険者年齢が高ければ高いほど、人間ドックの結果など詳細な健康状態を保険会社に提示する必要があります。人間、歳を取るとガタが来て、いろんな数値が悪くなりがちです。せっかく有利な保険に申込をしても、健康状態に不安がある方だと「謝絶」の憂き目に合う可能性が高まります。

それに比べて法人がん保険の告知事項は、がん罹患の有無、2 か月以内の入院歴、5 年以内の手術歴程度で、通常は人間ドックの結果などを提示する必要はありません。唯一、気になる条件としては、法人がん保険は過去がんに1 回でも罹患されたことのある社長は入れません。ただしそのような場合でも、社員を被保険者にすれば社長の勇退を想定した退職金の簿外資産を作ることが可能です。年齢が高くなるにつれて、がんの罹患率は高まります。そのため、ガン保険の返戻率は若い人ほど高くなります。保険に加入する社員は若ければそれだけパフォーマンスがよいのですが、若い社員は辞めてしまう可能性がありますし、一般社員だとあまり大きな保障を掛けることができません。一方、幹部社員であればそう簡単に辞める心配はありませんが、年齢もそれなりに上がっているので、今度はパフォーマンスが落ちてしまいます。どちらも一長一短があるので、よりよい組み合わせを探ってみるのが上手な保険活用の秘訣です。

最後に、「社員に掛けた法人がん保険の解約返戻金を社長の勇退退職金に充てる」ということに違和感を覚える方がいるかもしれません。でも、この点は全く問題がありません。社員に掛けた法人がん保険を解約して益出しすることと、勇退する社長に退職金を払うことは、それぞれ独立した取引です。つまり、社員の身体で保険に入ろうが社長の身体で保険に入ろうが、社長に保障が付かないことを除いて保険の資産効果という意味では、どちらでもいいことです。2 分の1 を費用化して、支払った保険料を高い返戻率で回収できれば、社長の退職引当金として機能したことになるのです。

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法人保険の活用法 その2 逓増定期保険

長期定期保険は、30代〜50 代前半の比較的若い経営者にとっては非常に使い勝手のよい保険です。では、それ以上の年代の経営者向けで、財務体質強化として保険を活用しながら社長の勇退資金準備もできるプランはないのでしょうか。

はい、実はあります。長期定期保険以外で、利益の圧縮ができる保険の代表が、「逓増定期保険」と「法人がん保険」の2 種類です。このうち、法人がん保険については次節で詳しく取り上げますので、ここでは逓増定期保険についてお話ししましょう。
逓増定期保険とは、読んで字のごとく定期保険の1 種で、次のような特長があります。
●加入時から保険金が徐々に増えていき(逓増していき)、最大で加入時の5 倍まで増える
●ほとんどの契約で、払った保険料の2 分の1 が費用として認められる(3 分の1 もしくは4 分の1 といったタイプもあり)
●契約内容によって、払込保険料の100%近くまで解約返戻金が貯まる

逓増定期保険を使った勇退退職金準備プランは、法人向け保険の定番中の定番です。その仕組みを【資料03】のイメージ図で確認しておきましょう。

【資料03】逓増定期保険のイメージ図
資料03
このように、逓増定期保険は補償額が徐々に大きくなるしくみになっています。また、前項でご説明した長期定期保険の解約返戻金が長い時間を掛けてゆっくり上昇していくのに対して、逓増定期保険の場合は大変短い期間で解約返戻金が上昇するプランを組むことも可能です。

ただし、解約返戻金は右肩上がりに増え続けるわけではなく、だいたいあるタイミングを境に減少し始め、やがて最後にはゼロになります。解約返戻金がピークのタイミングで、解約などの処理を行なうのが定石の活用法です。
たとえば、10年先に勇退を考えている社長がいたとします。こういう時には、10年後に解約返戻金のピークがくるような保険プランを選びます。

商品:逓増定期保険 10年先に解約返戻金のピークが来るプラン
Y 社契約者・受取人:法人
被保険者:社長(55歳)
保険金額:1 億円
保険期間:75歳まで
保険料:877 万1100 円/年額

Y 社の逓増定期保険を選択したのは、国内の保険会社の中で、10年後の返戻率が101・9%と最も高かったからです。まったく同じ保険金額(1 億円)の逓増定期保険でも、選ぶ保険商品によって、返戻率はまさに天と地ほどの違いがあります。次ページからの【資料04】と【資料05】で確認しておきましょう。

【資料04】Y 社逓増定期保険解約返戻金の推移例
資料04
【資料05】逓増定期保険保険会社ごとの比較例
【共通条件】
保険金額:1 億円
10 年後の保険料累計、解約返戻金と返戻率
資料05
いかがでしょう。この表を見るとその驚くべき違いがわかるでしょう。最もパフォーマンスに優れたY 社の返戻率が101・9%なのに対して、パフォーマンスが最低のU 社だと59%に過ぎません。Y 社では払った保険料の101・9%が戻ってくるのに対し、選択を間違えると59%しか戻ってこないのです。保険加入を検討する際、このように商品の比較選択はとても大きな差を生んでしまうことがあるのです。

さて、このY 社の保険料877 万円は、その2 分の1 の438・5 万円が費用として損金処理され、残り2分の1 の438・5 万円が資産としてバランスシートに計上されます。そして10 年後の勇退時に保険を解約すると、解約返戻金8939 万円が戻ってくることになります。
話を分かりやすくするため、単年ベースでの数字を見ていきましょう。会社からすると、毎年438・5 万円が費用として損金処理されます。たとえば、毎年1000 万円の利益が定常的に出ている企業の場合で比較してみましょう。
① 逓増定期保険を使わない場合
1000 万円×40%(法人税等税率)= 400 万円(法人税等税額)
② 逓増定期保険を使って利益を繰り延べる場合
(1000 万円−438・5 万円)×40%(法人税等税率)= 224・6 万円(法人税等税額)

このように、400 万円− 224・6 万円= 毎年175・4 万円分の税負担の抑制(利益の繰り延べ)効果が生まれるのです。次に、10年経って8939 万円の解約返戻金を取り出した場合です。10年経過時点の、バランスシートには438・5 万円× 10 年= 4385 万円が資産として積み上がっています。解約するときの会計処理としては、8939 万円−4385 万円= 4554 万円が保険の解約益として計上されます。このままですと、解約益の4554 万円は課税対象となり、その40%が税金で持っていかれてしまいます。何もしなければ、4554 万円× 40%(法人税等税率)= 1821・6 万円(法人税等税額)が法人税で持っていかれてしまうわけです。

せっかく10年間にわたって税負担の抑制(利益の繰り延べ)をしてきたのに、最後の最後に課税されてしまっては、このプランのうまみが半減してしまいます。そこで、出口のところで社長の退職金として多額の費用が発生すれば、収益と費用が相殺され、税負担が抑えられるのです。解約益課税部分の4554 万円を退職金とぶつけることによるメリットですが、実は10種類ある所得税の区分のうち、「退職所得」は税制上の恩典がもっとも配慮された所得区分なのです。たとえば、この社長の勤続年数が30
年で退職金として保険の解約益相当額の4554 万円を取るとした場合を考えてみましょう。

退職所得の計算式は、「退職所得の金額=(収入金額−退職所得控除額)× 1 / 2」退職所得控除の計算式は、「(勤続年数−20年)×70万円+ 800 万円」(※勤続年数20年以上の場合)となります。この社長の場合の退職所得控除額は、「70
万円×(30 年−20 年)+800 万円= 1500 万円」となります。ですから退職所得は、(4554 万円−1500 万円)× 1 / 2 =1527 万円となります。

さらに、退職所得は分離課税であり、他の所得とは合算せずに分離して別個に所得税を計算します。下の【資料06】を参照してください。

【資料06】退職所得税計算早見表
資料06
つまり、この社長の場合の退職所得税は「1527 万円×33%−153 万6000 円= 350 万3000 円」となります。4554 万円の解約返戻金(=退職金)に対して、そのわずか7・7%程度の350 万円しか税金が掛からないのです。給与所得の場合では住民税とあわせて最高税率が50%ですから、退職所得がいかに優遇されているかがわかります。

いかがでしょうか。少々ややこしかったでしょうか? もう一度、ここまでの説明を整理します。このプランのメリットは次のとおりです。
【法人にとってのメリット】
●保険料を積み立てている期間、税負担が抑えられる(利益を繰り延べできる)
●解約時に返戻率100%前後の資金が準備できる
●保険解約時の収益を退職金支払いにぶつけるため、退職金支払いによる一時的な収益悪化リスクを防止できる
●現役時代は大型の死亡保障が手に入る
●退職金を確実に準備できる

【個人にとってのメリット】
●計画的な退職金準備ができる(銀行預金のように流用されにくい)
●優遇税率で退職金を受け取れる

ここまでのところで、逓増定期保険を使った勇退退職金準備プランがこのように一粒で四度も五度もおいしいことがお分かりいただけたのではないでしょうか。これが、この種のプランが法人の税金対策の定番中の定番と言われる所以です。一方、メリットばかりに見えるこのプランですが、気をつけなければならない点もあります。ひとつ目には、保険料の払い込みです。どの保険にも言えることですが、上記の例では10年間は払い続けなければ損をします。定常的に払い込める保険料にすることが肝要です。

ふたつ目には、解約のタイミングです。逓増定期保険は解約返戻金のピークが続く期間が2 年〜4 年程度と比較的短いものが多く、解約のタイミングがずれると解約返戻金の受取額が大幅に減る場合があります。したがってピーク時に解約する必要があるのですが、このとき解約益が発生しますので、何か大きな費用をこのときぶつけないと解約益が課税対象になってしまうのです。このように、逓増定期保険に加入するときには、いつ使いたいのか解約の時期を明確にして、それにあった商品選択を行い、賢明な出
口戦略を立てることが成功の秘訣です。

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法人保険の活用法 その1 長期平準定期保険

30代〜40代の若い経営者には、その時期ならではの悩みがあります。とくに開業して数年といった社歴の浅い会社で、徐々に事業が軌道に乗りつつあるような場合、売り上げのほとんどが社長や一部の役員など、キーマンの肩に掛かっているようなケースが考えられます。この先、数十年間に渡って事業を継続する必要があるでしょうし、借入金も残っている。このような状態で、キーマンの身に何かあったら会社経営は大変厳しいものになるでしょう。プライベートでもお子さまがまだ小さいことも考えられますか
ら、家族の生活も心配です。

会社のキャッシュフローが潤沢なら良いのですが、このようなケースであればできるだけ保険料負担を安く抑えつつ、内部留保にも気を使い、かつ効果的に保障を得られるような手段が最も望ましいものと思います。

創業期〜成長期の会社に共通する潜在的な財務対策ニーズは、このようなものです。

● 万一の場合の借入金返済対策を目的に加入したい
● 保険料の負担が軽い商品で資金はできる限り本業に投資したい
● 財務強化できる商品で今のうちに将来を見捉えたい
まず、このようなニーズに対して活用できるプランをご紹介します。

商品:長期平準定期保険 X 社契約者・受取人:法人被保険者:社長(40歳・非喫煙・健康状態優良)保険金額:1 億円保険期間:98歳まで保険料:178 万3700 円/年額 「長期平準定期保険」は、比較的若手の経営者のキーマン保障を長期間に渡って確保するのに向いている保険です。この保険のメリットとして、以下のようなポイントがあります。
① 死亡退職金・弔慰金の確保
 保険金を死亡退職金・弔慰金の財源として活用できます。
② 事業保障資金の確保
 保険金を法人の資産とすることで、対外的な信用維持(事業保障)のために活用できます。
③ 勇退時の退職資金を確保
 在任中の保障だけでなく、勇退時には解約返戻金を退職金の財源として活用できます。
④ 利益の圧縮装置としての役割 税法上、払いこんだ保険料の2 分の1 を費用化することが認められています。この場合だと、178 万円の2分の1 ですから約90万円弱を毎年費用化することができます。法人税等の繰り延べ効果を得ることができます。
 「③ 勇退時の退職慰労金」についてですが、この保険の積立部分である解約返戻金を、次ページ【資料02】で表にして確認してみます。

【資料02】解約返戻金の推移例
資料02
毎年178 万円を払うことになりますが、払い込んだ保険料の相当分が保険会社の中にプールされていきます。
返戻率は1 年目が59・3%程度ですが、5 年目で88・8%、10年目で95・3%、15年目で98%と増えていき、20年目以降は払いこんだ保険料累計の100%以上が積み上がっている状態になるのです。

退職資金の原資を超長期にわたって確保するのは、なかなか難しいことです。運転資金として使われてしまう可能性もあるでしょう。そこで、キーマン保障のための保険に積立部分があるものを使えば、何もなく生き続けた場合には勇退時の退職資金とすることもできますし、予期しない出来事で突然キャッシュが必要な場合に使える緊急予備資金としての位置づけとすることもできます。緊急で現金化したい場合であれば、「契約者貸付」という制度を利用することで、金利は掛かりますが、解約返戻金の約8 〜9割相当分であれば、契約を維持した状態で生命保険会社から借り受けることもできるのです。

長期平準定期保険は、単なる死亡保障だけでなく、保険契約で何役ものリスク対策をうつことができる好例といえます。

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会社のリスク回避装置としての生命保険

投資と回収の視点で評価することが大切

保険と聞くと、どうしても保障機能のイメージが強いためピンとこないかもしれませんが、保険も銀行預金や投資有価証券などと同じ金融商品としての側面があるという視点を持っていただきたいと思います。

金融商品としての側面がある以上、保険も投資したお金に対して、回収できるリターンはどの程度か、投資と回収の視点で評価することが大切です。

金融商品としての保険資産ならではのメリットは、何といっても保障機能がついていることでしょう。もしものときには、払い込んだ保険料の何倍、何十倍ものお金を受け取ることができます。そういう意味では、保険でお金を回収する方法は、保険金で受け取るケースと、任意に解約して解約返戻金を取り出すケースの2通りが考えられます。

また、保険にはさまざまな税制上の恩典があり、うまく使えば税負担を軽くすることができます。回収の効果を測るときには、税務メリットも含めたうえで考えなければなりません。さらに前述したように保険資産には含み益や含み損があり、いざというときには利益を調整する機能もあるのです。

一方で保険資産のデメリットは、保険料が保険会社の中で積み立てられるときに、保障のコストが引かれるため、支払った保険料が全額積み立てられるわけではないことです。契約からの年数や保険商品によっては、支払った保険料が100%戻ってこないこともあります。解約返戻金がどのような割合で積み上がっていくかは、保険商品によって違いますし、同じ保険でも保険料の払込期間、契約時の年齢等の契約内容によっても変わります。ほとんどの場合、契約から何年経てば解約返戻金がどの程度まで増えるかは、契約時にすべて正確にわかるので、保険に加入するときには、解約返戻金も含めて比較検討することが必要です。

もちろん、うまく商品を選べば契約から一定期間で解約返戻金が払込保険料の100%を超えることも可能です。そればかりか、被保険者の年齢・性別などの条件によっては150%近くまで増える商品もあります。

ただ、100%を超えるまでの一定期間に関しては、資金を寝かすことになります。その間、銀行預金であれば利息で増えるので機会損失と言えなくもありません。しかし、実際今のような超低金利が続いている状況では、銀行預金はお金をただ寝かせておくようなものなので、そこはあまり気にならないのが本音ではないでしょうか。

預金で持つ資産、保険で持つ資産、設備投資する資産などを適切に配分

会計的には、資産を銀行資産として持つか、保険資産として持つかはあまり問題ではありません。なぜなら、銀行預金から保険料として毎年100万円を支払うという行為を会計的な側面から見てみると、バランスシート上の銀行預金という流動資産が、保険料積立金という固定資産に移っただけで、会社の財産そのものにはなんの変化も生じないからです。つまり、銀行にある資産を単純に保険会社に預け替えするだけで、なんら会社の収支に影響が出るわけではありません。結局のところ、それぞれの特徴を正しく理解し、預金で持つ資産、保険で持つ資産、設備投資する資産などを適切に配分し、資産を最適化してこそ賢い経営者と言えます。

会社を経営していると、さまざまなリスクに直面することがあるでしょう。為替変動によって原材料が高騰するリスク、製品の事故があって賠償金の支払いが生じるリスク、社屋が火事になって焼失してしまうリスクなどもあれば、最近なら個人情報の漏えいによる賠償金の支払いリスクも考えられます。未曾有の被害をもたらした東日本大震災のように、思いもかけない形で大変な事態に見舞われることもあります。

こうしたリスクの中には損害保険で備えられるものが多いのですが、生命保険同様、すべてのリスクに対して保険で備えるのは経済合理性に合いません。しかも、新社屋を建てたときには火災保険に入るように、比較的顕在化しているリスクに対しては備えやすいのですが、見えないリスクに関しては何の手だても取れないことが多いのです。経営上大きなリスクに直面し資金繰りに困った時に、銀行の融資がすんなり受けられるとは思いません。

不幸にも損害保険を掛けていないリスクが突然会社を襲ったらどうしますか?

そこで、ぜひ知っておいていただきたいのが、社長の生命保険はどんなリスクに対しても使えるということです。生命保険を使って解約返戻金をストックしておけば、いざという時には契約者貸付という手段で保険会社から貸付を受けられますし、解約して解約返戻金を取り出すこともできます。とくに解約の場合には、解約返戻金という資金だけでなく、解約益という利益をもたらしてくれることもあり、会計上のダメージもリカバーしてくれます。保険という「外からお金を還流させてくれる装置」を持っているだけで、会社の経営は飛躍的に安定するのです。

金融ビッグバン以降、メインバンクが資金を提供してくれるスキームが断たれました。いざというとき、国が何とかしてくれるだろうという過度の期待をもつのも禁物です。これからの世の中、想定内のリスクはもとより、想定外のリスクに備えて、自分で解決手段を持つという姿勢こそが必要です。そしてその効果的な手段のひとつが法人保険なのです。

では、具体的にどんな法人保険があるのか? 次回からは、テーマ別に今すぐ使える法人向け生命保険の事例をご説明したいと思います。

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4種類の税軽減方法と、損出し・益出しのコントロール

「保険の税務メリットは節税ではない、結局は課税の先送りである」ということをお話ししましたが、税制上のルールをうまく使えば結果として税軽減を実現することは可能です。ただし本当の意味で税軽減できる技はいくつもあるわけではなく、基本的には次の4 種類を組み合わせて使います。

・非課税枠、控除枠を利用する
・毎年使えるものは毎年使う
・税率の低い区分へシフトする
・課税対象者や年度など分散を図る

今後の国の政策にも影響を受ける事柄ですが、国際社会における我が国の法人税率の高さはかねてから指摘されており、長期的には実効税率の低減化が進むと思われます。実効税率の低減化が進むと、国としての税収は当然、間接税(消費税等)や資産課税の強化(所得税、贈与税、相続税の税率アップ)につながるおそれがあります。

平成24年7月現在、課税所得1800万円を超える所得者は、所得税率40%、住民税10%もの税率です。これだけの税率ですと、課税所得1800万円以上になる社長の役員報酬をいくら上げたとしても、手取りは思うように増えません。それなら役員報酬を増やすよりも、その分を積み立てておいて退職金として受け取る方がトータルではずっと手取りを増やすことができます。

というのも、退職金に掛かる税金を計算する際には次のような決まりがあります。

● 他の所得と合算されない(分離課税)
● 勤続年数に応じた基礎控除があり、長ければ長いほど非課税枠が増える
● 2分の1課税になる

退職金にはこのような優遇制度がありますから、給与所得から退職所得に所得の区分を変えるだけで、税負担を軽くすることができるのです。

また、保険に加入する際に入り方を工夫することで、税引き後の手取りを増やすこともできます。

被保険者と契約者が社長、受取人が子どもの場合には、保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象になります。この場合の保険金には、法定相続人× 500万円の基礎控除があるものの、残った部分は相続財産として課税対象になります。相続税の最高税率は50%。他に相続財産がたくさんあって最高税率が適用されれば、非常に多くの資産が税金で持っていかれる計算です。しかも、相続が発生してから原則10か月以内に現金で納税する必要があるのです。

そこで、被保険者を社長、契約者と受取人を子どもに変えることで、保険金は相続税ではなく一時所得の課税対象になります。一時所得の計算をする際には次のような決まりがあります。

●50万円の非課税枠が使える
●2分の1課税になる

相続税と分けてこうした優遇制度を活用することで、これまた税負担を軽くできます。しかも保険金を一時金で貰わずに、部分解約などで毎年少しずつ受け取るように工夫すると、50万円の非課税枠は毎年使うことができます。このような前提知識があれば、親が毎年子どもなどに一定額を贈与して、それを元手に保険に入るというプランが作れます。

贈与税には1年間で110万円の非課税枠が認められており、加えて200万円までは10%の税率となっています。毎年少しずつ贈与をし続ければ、将来の相続財産を減らすことができます。贈与は子どもだけでなく、子どもの配偶者や孫にもできるので、贈与の対象を広げることでさらに効果的に相続財産を減らすことができるのです。保険を使った提案には、これらのルールを活用した技を駆使します。

さて、ここまで保険を活用した税負担を軽減させる方法の一例をご説明しましたが、生命保険を使って利益・損益を調整する技も存在するのです。もしも決算の内容が悪かったために、融資を受けられなかったり、新規の取引を断られたりしたら、安定した経営は望めません。経営者の皆さんは、毎年の決算が黒字になるよう全力で取り組んでおられることでしょう。しかし、たとえ事業が順調でも会社がさらに発展するためには、大きな支出を伴うこともあるはずです。生産性アップのために最新の機械を購入した年には経費が膨らみますし、優秀な人材をスカウトしたために人件費がかさんだりすることもあるでしょう。毎年黒字にするということは、口で言うほどたやすいことではありません。

そこでぜひ活用すべきなのが、保険の含み益です。前述しましたが、一時的な損失と保険の含み益をぶつけることで、相殺しあって赤字を免れることができます。

保険の含み益は、保険料が経費に計上できるかできないかにかかわらず、解約返戻金が帳簿上の保険資産を上回れば生まれます。保険による利益が表面化するのは、解約した時ばかりでなく、法人契約を個人に名義書き換えしたときや、払い済み(保険料払い込みを停止し、その時点の解約返戻金で買える一時払いの生命保険に変更すること)という変更をする方法もあるのです。

逆に、保険を活用して意図的に損を出すこともできます。先ほどとは全く逆の考え方で、解約返戻金が帳簿上の保険資産を下回れば含み損が表に出ます。会社経営では、この含み損が役に立つことがあることも付け足しておきましょう。たとえば、土地を売却した場合など一時的に大きな利益が出たとします。会社にとって利益があるのは喜ばしいことなのですが、黒字になればその分、納税額もアップします。そこで保険の含み損を表面化させ、利益をコントロールすることも可能です。

保険は、保険料を支払わなければ契約を続けることができません。「失効」といって保険契約が途切れてしまいます。ただし、この時点では解約ではないので解約返戻金は支払われません。このままの状態で放っておき、必要な時になったら保険会社に連絡を入れ、解約益を取りだすことができます(保険会社・保険種類によって年数などの条件が異なります)。これが「復活」です。復活する際には、失効期間中の保険料をまとめて支払います。よって、このタイミングで一気に3年分の費用が発生します。復活時には健康状態の告知が必要ですが、それさえクリアすれば失効や復活をすることはできますし、保険をいつ解約するかも経営者の意思で任意に判断できます。つまり、結果的に契約者の裁量で利益や損失を調整できることになるのです。

 

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保険は費用で落として利益を圧縮できる装置

法人が契約する保険は、税制上の恩典の話を抜きには語れません。経営者の方には言わずもがなの話でしょうが、定期保険のように保険は種類によって、保険料が経費で計上できるものがあります。経費として計上できる割合は、半分だけ計上できる2 分の1 損金タイプがオーソドックスですが、3分の1損金や4分の1損金、商品数は少ないながら全額が損金として認められるタイプなどの例外もあります。

保険料を経費として処理できれば、その分利益は抑えられ、法人税負担は軽くできます。会社を取り巻く経済環境は決して楽なものではない昨今、日々のたゆまぬ努力でやっと手に入れた利益の40%をあっさり法人税で持っていかれるのは、経営者にとってそう簡単に納得できる話ではないはずです。

しかもいくら景気の良い時にたくさん納税していたとしても、状況が変わって資金がショートしかけたからといって国に助けてはもらえません。納める税金は1円でも少なくして、会社にお金を残したいと思うのは経営者ならごく自然な感情です。保険を使った税負担軽減策は、そうした経営者の心をしっかり捉えて浸透しています。

保険の税務メリットが経営者の関心を集めるには理由があります。単に利益を圧縮するだけなら、広告宣伝費など他の経費を使ってもよいはずです。しかし、広告宣伝費は一度使ったら、そのお金は宣伝という効果で会社の利益に貢献することはあっても、現金として取り戻すことはできません。これは他の経費でも同様です。これに対し、保険料は経費で計上して帳簿上は使ってしまったことになっても、実際になくなってしまったわけではないのです。保険会社の中でしっかりと積み立てられているのです。

 

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もう少し具体的に解説します。ここに、ある会社のP/L(損益計算書)とB/S(バランスシート)があるとします。この会社では法人契約で、2分の1損金タイプの保険に加入しています。毎年の保険料は1000万円だとすると、500万円は保険料として経費で処理され、残りの500万円が保険資産としてバランスシート上に載せられていきます。

現在、契約から10年が経ち、バランスシート上には保険料積立金が5000万円計上されています。この保険は、契約から10年経つと払い込んだ保険料が100%戻る設計になっているので、今解約すれば解約返戻金は1億円になります。このような状況のとき、バランスシート上は5000万円の保険資産でも、実際には見えない資産5000万円を保険会社の中に保有していたわけです。

生命保険に加入したことで単に保険料を経費で落として、毎年の税金を抑えているだけでなく、帳簿上には現れない資産を作り出している点が、本当の意味で保険の優れているところなのです。このような保険の効能を最大限に発揮するためには、解約返戻金というキャッシュバリューがしっかり(少なくとも90%以上)貯まる保険を選ばなければなりません。保険選びを間違えると、同じ保障内容で同じタイプの保険でも払込保険料の70%しか戻らない場合もあります。

保険料が経費になるからといって保険の中身を吟味しないで加入すると、その場では税負担が押さえられたようにみえても、後から十分なお金を取り戻すことはできません。その分、保険会社の利益に貢献しただけで、結局手元にお金が残らなかったということになりかねないのです。

一方で、保険に加入するだけで税負担が抑えられるような方法が世の中にあるのは、普通に考えればおかしな話です。もしそんな商品が開発されたら、とっくの昔に法律で規制されていることでしょう。そう思うと、保険料を費用化して節税できるという考え方には何か落とし穴があるような気がします。

これを先ほどの例で考えてみましょう。毎年保険料を支払ったら、500万円が費用化されて帳簿から消えていきます。ただし、消えるのはあくまでも帳簿上の話であって、実際に使ってしまったわけではありません。保険会社の中で積み立てられ、解約した時には解約返戻金1億円が返ってきました。このとき、帳簿上の保険資産は5000万円。差額の5000万円は解約益という利益として、突如表面に現れるわけです。

つまり、保険契約を続けているときは利益が圧縮されていましたが、解約と同時に圧縮されていた部分が元に戻っていることになります。表面化した利益には、当然ながら税金が掛かります。保険を使った節税は、結局のところ「節税」ではなく、「課税の先送り」であることがわかります。(【資料01】のイメージ図2 参照)

だからこそ保険の費用化は認められてきたわけですが、出口のところで無防備に課税されてしまっては、あまり意味がありません。

そこで考えておかなければいけないのが、法人保険の出口戦略です。解約した年に社屋の改築や、役員の退職などの大きな支出があったらどうでしょうか? 旧社屋の解体費用や退職金の支払いなどによる損失と保険の解約による利益が相殺しあえば、解約益が課税されることはありません。

法人保険は、出口をどう考えるかとセットになって初めて、効果を発揮することができます。裏を返せば、加入時にそこをしっかり意識してプランを立てることが重要といえます。

では、どうプランニングすればいいのでしょうか? 次回は、生命保険の出口戦略について考えてみましょう。

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特徴を踏まえた法人保険戦略

もそも保険にはどんな種類があって、それぞれにどんな特徴があるのか

最適な法人保険を選ぶためには、そもそも保険にはどんな種類があって、それぞれにどんな特徴があるのか。さらに、保険商品の特長を使いこなすポイントを知らなければなりません。おさらいの意味で、法人保険選択のポイントを次の3点に整理します。

1点目が、保険期間です。

保険期間とは、その保険がいつまで使えるか? ということです。オーナー社長が加入する保険について検討するなら、この保険期間は最優先に考えるべき要素です。保険には大きく、期間限定で使える定期保険と、いつでも使える終身保険という2 つのタイプがあります。同じ保障額、保険料払込期間で比べた場合、当然ですが定期保険の保険料は、終身保険よりかなり安くなります。

2点目の選択ポイントが、解約返戻金です。

保険種類によって解約返戻金が多く貯まるものもあれば、貯まりにくいものもあります。一般的には、終身保険は解約返戻金が貯まりやすく、掛け捨ての定期保険は文字通り解約返戻金が貯まりません。しかし、一部の定期保険では解約返戻金が貯まるものもあり、年齢が若い社長の場合、商品選びさえ間違えなければ、契約からの経過年数次第で解約返戻金が払い込み保険料の100%を超えるものもあります。

3点目に、経理処理の違いです。

定期保険やがん保険の保険料は、一部または全部が経費として計上できます。一方、終身保険の保険料は経費にはならず、全額が保険料積立金として資産計上されます。

イチかバチかの博打的な加入のスタイルには大いなる疑問

少し話がそれますが、今までの傾向として法人が加入する保険は、保障機能を重視して販売されてきたように思います。このため、社長にもしものことがあったときには、「おめでたく」というのもおかしな話ですが、「保険に入っていてよかった」ということになります。しかし、保険が使える期間に、もしものことが起きなかった場合には、「残念なことに」保険は掛け損だったという結末に終わってしまいます。

しかしながら、このイチかバチかの博打的な加入のスタイルには大いなる疑問があります。法人が加入する保険は個人と比べてゼロひとつ保障額も大きく、保険料の負担もそれなりに大きくなります。にもかかわらず、死んだら大きなリターンがあるけど、生きていたらリターンがゼロのような契約にしてしまうのは、それ自体リスクが高すぎます。リスクに備えるための保険にも関わらず、保険がリスクになっては元も子もありません。

実は、死んでも生きても、どちらに転んでも役立つような保険の加入法はあるのです。そのためには、解約返戻金が大きく貯まる保険を選ばなければなりません。

ここまでの話を聞けば、ほとんどの人が、どちらかといえば「保険料は安く納まり」「将来的には支払った保険料が戻ってきて」「経費で計上できる(税務メリットが使える)」といった、つまり、「死んでも生きてもどちらに転んでも使える」保険がよいと思われるでしょう。解約返戻金が貯まる一部の定期保険は、まさにこの特徴を持つ保険です。

では、この保険が万能かというと、決してそうではありません。なぜなら、定期保険のように期間が決められた保険は、相続や事業承継には使えないからです。しかも経費で計上することを考えたら、保険料が安いことが必ずしもよいことではないかもしれません。

結局のところ、保険戦略は、保険のメリット、デメリットを正しく理解したうえで、特徴の違う保険を組み合わせて、いかにニーズに合った保障を効率よく準備するかに尽きるのです。そして、税負担の軽減というだけではなく、法人保険を効果的に使う上では適切な「入口」と「出口」を理解して活用しなければなりません。そのために、わたしたちのようなプロの力を利用していただきたいということです。

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オーナー経営者のリスク対策とは?

あらためて経営の課題点を整理してみると、おのずと保険の加入目的が明確になってきたのではないでしょうか。4つとも全部必要だとお感じになった方もいらっしゃるかも知れません。

全てに備えられれば理想的ですが、今の日本の保険料でいうと、相続対策で50歳男性が1億円の保障を作るといった場合、効率よく準備したとしても6000万円以上の保険料負担が発生してしまいます(終身保険で15年払い込みとして)。こうした事例からもお分かりいただけるかと思いますが、よほど利益が出ていて生命保険に投入できる資金がたくさんある企業は別にして、事業保障、相続・事業承継、勇退資金準備、緊急予備資金対策のすべてに対して万全に保険で備えるというのは非現実的な話です。

そこで考えられる方法は3つです。

① 「リスクに備える方法は本当に保険しかないのか?」を考えること
② 加入すべき保険について、緊急性の高さで優先順位をつけること
③ ひとつの保険で複数の目的を兼ねる、柔軟に使える保険を加入すること

経営者個人や会社の諸条件と保険商品の条件を見比べながら優先順位を検討するためには、必要とされる知識や技術は少々高度になってきます。こうした方法は、社長個人の判断やテクニックだけでできるものではありません。本書で基本的な知識は身につけた上で、信頼できる保険コンサルタントなど、プロに相談するのが得策です。
 

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