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巷では保険見直しブーム

「生命保険の見直し」は今、ブームといっても過言ではないように思います。テレビや新聞などでネット生命保険や保険ショップの広告を見ない日はありませんし、東洋経済、ダイヤモンド、エコノミストなどの経済雑誌も年に数回は「保険の見直し特集」を組むほどです。

国税庁の『平成22年 民間給与実態統計調査結果』によると、わが国の民間企業で働くサラリーマンや役員、パート従業員の平成22年の平均年収(額面金額)は412 万円だそうです。平成に入って最も高かった平成9 年が467 万円ですから、その当時と比較すると平均年収は約12% も落ちています。そして、景気がただちに良くなるとはとても思えない今のご時勢で、今後確実に起こるとわかっていることは、社会保険料のアップや増税など。個人の資産や家計を取り巻く状況はますます厳しさを増していくといえます。

そのような中、「生命保険は一般サラリーマン家庭にとって、住宅の次に高い買い物」「家計の節約方法で一番良いのは、毎月支払う高額の固定費を見直すこと」「だから、保険のムダを省くことが固定費の見直しに繋がる」このようなうたい文句で、いま生命保険の見直しは盛んに行なわれています。

生命保険には「感覚的に高いか安いか、いいか悪いかの判断がしにくい」という特徴があります。前章にクルマの選び方の例を出しましたが、たとえば「トヨタが新型のハイブリッド車を150 万円を切る価格で新たに発売するらしい」「燃費はリッター35キロオーバーだ」「しかもセダン、RV の2 車種をラインナップ」という情報があれば、クルマ好きであれば具体的なイメージがすぐに思い描けるでしょう。要不要もすぐに判断できると思います。

ところが、生命保険だとそれが難しいのです。「A 生命が実損てん補型の新しい医療保険を発売するらしい」「先進医療特約は3000 万円までカバーされる」「終身タイプと10年定期タイプの2 種類をラインナップ」「いちばん安いタイプだと、保険料は
40歳の男性で月々わずか5980 円」といわれても、それが高いか安いか、自分に必要か不要かを判断するためには、あらかじめかなり専門的な判断基準を持っていない限り無理でしょう。では、普通の生活者でも覚えておくべき保険を見直すための判断基準とは何でしょう。たとえば、保険ショップに行ってよく売れているオススメを聞いて買えばいいのでしょうか? それとも、雑誌の保険ランキング1 位の商品を買えばいいのでしょうか? あるいは、馴染みの生保営業マンに意見を求めて提案してもらうのがいいのでしょうか?

「保険の見直し」というのは、売り手の考え方によっていかようにでも左右されてしまうということはすでに述べました。そして実はいま、それ以上の問題があるのです。それは、売り手の品質(提案力、マインドなど)にものすごくバラつきがあるということです。生命保険の売り手を正確には生命保険募集人といいますが、この人数に関するデータがあります。生保協会「2011 年版 生命保険の動向」のデータによると、生命保険会社の営業職員数と生命保険代理店の使用人数の推移が分かります。これによると、驚きの数値となります。約15年間の間に保険会社の営業職員数は3 分の2 になっていますが、代理店使用人数の数はなんと約6 倍以上になっており、売り手の数の合計は2 倍以上に増えています。この間、個人保険の市場規模は約1400 兆円から約900 兆円と3 分の2 に落ち込んでいるにも関わらずです。

【資料09】
生命保険業界の従事者数
資料09
要因としては、規制緩和により銀行や證券会社などの他業種での販売が認められるようになったことや保険ショップの躍進などがあげられますが、それにしてもものすごい増え方です。そして、これだけの増え方をしているわけですから、この中にはさまざまな人がいるわけです。A 保険会社で何回もトップセールスになったが1 社専売のやり方に限界を感じて乗合代理店に転身した人。B 保険会社で全く契約が取れなくて困り果てて保険ショップに転身した人。個人向けの保険販売を得意としている人。法人向けの保険を得意としている人。出自もキャリアもスキルレベルも全く違う人たちが同じように「保険コンサルタント」もしくは「ファイナンシャルプランナー」を名乗っています。

そして前述のとおり、ここ10年少々の間に保険会社は10社以上も増えています。会社が増えるということは、当然商品も増えています。全部の会社が扱う商品数でいったら、今売られているものだけでおそらく何百という単位になるでしょう。さらに、コンサルティングするということは、そこに既存契約つまり過去の商品分析なども加わるわけですから、相当幅広い知識を持ったコンサルタントにあたらないと的確なアドバイスが貰えない可能性があるのです。

「生命保険のムダを減らす」というのは、たしかに節約につながりそうで耳あたりのいいフレーズだと思います。でも、ちょっと待ってください。「保険料を安くする」って、実はとても簡単なことなのです。「現時点で最安値の保険をオススメする」これだけでいいのですから。

本当の意味で保険を見直すのであれば、繰り返しになりますが数多くの要素を検討する必要があります。 まず今後どのような保障がご自身に必要なのか。それは貯蓄では対応できないのか。これまで入っていた保険をどうするのか。最終的な費用対効果はどうなるのか。保険金や解約返戻金などにどのように税金が掛かってくるのか……など、複合的な観点で検討してから、はじめて具体的な保険商品を決めていくプロセスになるのです。そこを考慮せずに、いきなり「ムダをそぐには……」「この商品は……」などと闇雲に比べるだけの見直しは、全くのお門違いです。

第一章、第二章による『基礎知識編』はここまでです。次章からはさらに実践的な具体例を挙げながら、生命保険を活用するためのポイントや考え方をまとめていきます。ぜひお読みいただいて、賢明な生命保険活用にお役立てください。

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消費者ニーズの変化が保険会社に与える影響

改めて質問です。あなたは、国内で営業している生命保険会社がいま何社存在するか、ご存知でしょうか。

正解は、2012 年6 月1 日現在で43社です。護送船団の時代(〜80年代)は、国内生保20 社体制と呼ばれていました。そのころと比較しますと、20年強で倍増しています。そして、単純に増えているだけではなく保険会社もずいぶんと変わっているのです。生命保険協会というところが、国内の生命保険会社の変遷図をホームページで公開していますから、ご紹介しておきましょう

「生命保険会社変遷図」社団法人生命保険協会

これを見ると、ここ10年ほどの間に業界全体が大きく変化している様子が分かります。流れとしては、旧来の保険会社同士の合併や改称、そして新規参入といった動きが見て取れます。全体的には伝統的保険会社が減少する一方で、損保系、外資系、それからネット系の企業が続々と参入しているのが、今の生命保険業界の特徴です。

さて、ご存知のとおり日本は少子高齢化社会です。『平成23年版 子ども・子育て白書』によると、わが国の人口構造は2030(平成42)年の1 億1522 万人を経て、2046( 平成58 ) 年には1 億人を割って9938 万人となり、約40 年後の2055 年には8993 万人となる見通し、とあります。2010 年は人口減少元年と言われましたが、これからは毎年人口が減少していく社会になることが明白です。

商品に対する消費者ニーズの変化

生命保険は人の体に掛けるものですから、中長期的に人口が減れば必然的に需要が減少するものと考えられます。にもかかわらず、ここ数年、新規参入する生命保険会社が増えているのです。なぜでしょうか?この謎を解くカギをいくつかご説明したいと思います。 ひとつ目のカギは、「商品に対する消費者ニーズの変化」です。総務省統計局『人口統計資料集2010』の人口統計を見ますと、日本の人口構造がこれからどのようにシフトしていくかが分かります。全体的に人口は減少していくのですが、0 〜
19歳、40〜59歳までの層は大きく人口減少が見込まれている一方で、60〜79歳の層はさほどでもなく、80歳以上の層に至っては50年で倍増する、という見通しなのです。

これが何を意味するかというと、これからの消費者ニーズは「死亡保障ニーズから生存保障ニーズへ変化する」ということです。我が国の年金財政は依然として大きな不安を抱えています。日本の年金の財政方式は賦課方式といいますが、「必要な年金原資を同時期の現役世代の保険料で賄う」という方式です。保険料率は年金受給者と現役加入者の比率で決まるため、人口変動の影響を受けます。もっと端的に言うと、国の金庫に年金原資というのは存在しないのです。なぜなら、現役加入者が払った年金の保険料は、そのまま年金受給者に支払われるからです。

いま年金受給者に支給されている年金を100 とします。そして1 人の年金受給者が貰う100 に対して、5人の現役加入者が20ずつ出して支えている構図だとしましょう。ここで年金受給者が2 人になり、現役加入者が4 人になるとどうなるでしょう? 年金額が変わらなければ、必要な年金は200 になります。そして現役加入者は4 人ですから200 ÷ 4 =50になります。現役加入者の負担が2・5 倍になるわけです。

これはさすがに厳しいでしょうから、年金を下げるという話になります。100 を80にするとどうなるでしょう?年金額は80×2 で160 になります。これを4 人で割りますから160 ÷ 4 =40。この水準でも現役加入者の負担は今の2 倍です。

賦課方式とはこういう構造ですから、「少子高齢化」は最悪なのです。逆に、高度成長期ごろの日本のように、毎年たくさん子どもが産まれて高齢者が少ない場合には、非常に理にかなった仕組みであったともいえます。このことから、たとえば50
年後にいまと同じ年金額をもらうことが可能か? と考えると「非常に難しい」と言わざるを得ないのです。

そして、毎年平均寿命は延びていますから、リタイアから死亡するまでの期間が相当長くなります。つまり、長生き自体が経済的なリスクとなる可能性が高いわけです。そういったリスク対策として、従来から幾つかの生命保険会社では「年金保険」という商品を取り扱っていました。主に退職金の預け先として人気のあった商品ですが、消費者ニーズの高まりを受け、ここ10年ほどの間に年金保険専業の保険会社が続々と新規参入しているのです。

販売チャネルに対する消費者ニーズの変化

ふたつ目のカギは、「販売チャネルに対する消費者ニーズの変化」です。大きなショッピングセンターに行くと最近必ずといっていいほど目にするのが「保険ショップ」です。大手ですと『ほけんの窓口』『保険市場』などがあります。従来型の生保レディに勧められて買うのではなく、消費者自らが出向いて納得できたら買うというスタイルです。また、最近テレビCM や雑誌、SNS などで積極的に宣伝をうっているのが、ここ数年で新規参入が続いているネット系の生保会社です。ライフネット生命やネクスティア生命などが代表的ですが、商品設計がとてもシンプルであること、ネットで手続きがすべて完結することなどの特徴があります。

こういった販売チャネルが消費者に受け入れられるようになった要因は、ずばりインターネットの普及です。保険の比較サイトやファイナンシャルプランナーのホームページなどの出現で、消費者はプロの目から見た良い保険とそうでない保険の情報、口コミなどを容易に入手できるようになりました。そういった情報を見て、プロに相談して複数の保険会社の中から検討したいという方は保険ショップの門戸をたたくでしょうし、シンプルで安くて煩わしくないものがいいという方はネット系の生命保険会社を考えるでしょう。(私見ですが、これからは保険の販売チャネルは乗合代理店経由かネット経由かに大きく収斂していくのではないかと思います)

こういった販売チャネルの多様化が意味するところですが、いわば「消費者が自ら販売チャネルや商品を選ぶ」ということに他なりません。そこで選ばれる保険はどういう保険になるでしょうか?答えは自明です。商品自体の競争力(価格、保障内容、
わかりやすさなど)が、売れ行きに大いに関係してくることになるのです。

30年前でしたら、どの保険会社の商品も横並びで同じような構造や値段だったので、人間的な繋がりだけで加入すればよかったでしょう。そもそも比較する意味があまり無かったわけです。ところが今は、同じ保障内容の商品でも保険会社や保険種類が違えば、費用対効果はまるで違ってきます。ネットの普及などで比較ができるようになった今、費用対効果がイマイチの商品ばかりを売っている保険会社の将来は明るいものとはいえないでしょう。他と比較されることを嫌う保険会社、代理店なども同様です。

このように、消費者ニーズの変化がいまや保険会社の商品、それから業界全体の構図そのものを変えるほどの影響を持つようになってきた、といえます。これは間違いなく消費者にとっていいことです。保険会社には、保険金不払い問題で地に落ちた信頼を完全に払拭するくらいの、素晴らしい商品をぜひ開発していただきたいと思います。

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保険会社の安全性

この保険会社って大丈夫ですか?

保険のコンサルティングをしていて、候補の商品が決まる前後に、お客さまからよく聞かれる質問があります。
「この商品が他と比べて割安であることと、その保障内容は理解できました。ところで、この保険会社って大丈夫ですか?」

日本生命や第一生命といった大手の保険会社の商品を検討されている場合は別にして、国内中堅クラスの生命保険会社の商品や、外資系保険会社の商品を候補とされている場合によく尋ねられます。高額な保険料を払うことになる以上、その会社の財務の健全性や、事業撤退しないかどうか、などは気になって当然のことといえるでしょう。

日本国内には2012 年6 月1 日現在、43社の生命保険会社が存在します。この中には、従来から存在する日本企業や第一生命のような大手企業から、グローバルでも市場シェアを持っている外資系企業や、規制緩和に伴いここ10年以内に新規参入した企業など、さまざまな企業があります。当然ですが、何十年もの歴史がある大手企業と新規参入の企業とでは、財務的な体力はまったく異なります。

とはいえ、一般消費者が生命保険商品を契約する前に、保険会社の財務的な余力が気になるからといって保険会社各社の貸借対照表や損益計算書を分析するのは非常に難しい作業ですし、比較に掛かる時間を考えても非現実的といえます。
そこで、一般的に生命保険会社の経営状態を判断する指標をふたつご紹介します。

ひとつめは「ソルベンシーマージン比率」です。
専門用語ですが、言葉の意味は次のようなものです。

ソルベンシー(Solvency)=負債等に対する支払い能力
マージン(Margin)=(時間・経費等の)余裕・余地

ソルベンシーマージン比率は、保険業界では広く知られている保険会社の財務健全性を示す指標です。簡単に言うと、「通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる支払余力をどれだけ有しているか」を判断するための行政監督上の指標のひとつです。
たとえば先の東日本大震災などの災害や、リーマンショックのときのような株の暴落などといった通常の予測を超えて発生するリスクに対応できるだけの余裕、つまり「支払余力」があるかどうかを判断するための指標です。

ソルベンシーマージン比率は、数字が大きいほど支払余力も大きいと判断されます。この数値が200% を下回った場合、監督官庁である金融庁から監督上の措置(早期是正措置)がとられることとなっています。そのため、行政上の取り扱いとしては200% を超えていれば安全な会社とみなす、とされています。

しかし、過去に経営破綻した保険会社の多くは、破綻直前のソルベンシー・マージン比率が200% を超えていました。また2012 年6 月1 日現在で、この指標が最も低い会社でも600% 強の数値となっており、200% を少々超えている程度では契約者からの信
用が得られない状況となっています。大手の保険会社では1000% を超えているところもありますし、中には3000% を超えている会社もあります。この数値は高ければ高いほど、支払余力が大きい会社と考えればよいかと思います。

ふたつめは「格付け」です。国内で営業している生命保険会社を、S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)やMOODY’S JAPAN(ムーディーズ・ジャパン)などの民間格付機関が格付けしている情報のことです。ご存知のとおり、経営状態を同業他社と較べてAAやA-、Bなどのスコアで表現したものです。

これらふたつの指標は、多くの保険会社では「ディスクロージャー資料」としてインターネットで公開しています(格付けについては取得していない会社もあります)。が、複数の会社の数値比較という意味では個別に比較しなくてはならないため、少々見にくいです。そこで、複数の生命保険会社を取り扱っている保険代理店の中には、これらの指標をまとめたサイトを運営しているところが存在します。中でも保険マンモス社のホームページが非常に見やすく、オススメです。

「保険マンモス社ホームページ」

次に、最悪のケースとして「ご自身の加入されている生命保険会社が破たんしたらどうなるか」をご説明したいと思います。日本には、生命保険会社の破綻から保険契約者の保護を図る目的で、「生命保険契約者保護機構」という法人があり、国内で事業を行う全ての生命保険会社が会員として加入しています。万一、生命保険会社が経営破たんすると、この保護機構が資金援助等を行ないます。 

「生命保険契約者保護機構ホームページ」

具体的には、保険契約の継続に向けた手続(行政手続か会社更生手続かのいずれか)が取られるのですが、いずれの場合も保険契約は継続され、保護機構によって、破綻時点の保険契約(再保険を除く)の責任準備金等の90% までが補償されます。

責任準備金とは、生命保険会社が将来の保険金・年金・給付金の支払いに備え、保険料や運用収益などを財源として積み立てている準備金のことで、保険業法によって、生命保険会社に積み立てが義務付けられているお金です。

気をつけたいのが、たとえば「1000 万円の死亡保険金が出る契約」に加入していたとして、「900 万円の死亡保険金を受け取る権利は保障される」または「積み立て部分の9 割は補償される」ということになるわけではないということです。破たんした保険会社の契約は、その契約を承継した会社が利率などを決めることができますから、消費者にとって不利な条件に変更される可能性があるのです。

このように、保険会社の安全性はとても大切なことです。何十年先もの生命保険会社の存続状況などを見通せる人はいませんが、加入してすぐに破たんされてしまった、というようなことを防ぐために、加入する前に一度はその会社の健全性はどうか? という観点で確認されてはいかがでしょうか。

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保険金不払い問題を整理する

保険金不払い問題

売り手の立場としては、「できるだけたくさんの見込み顧客に、手間暇やコストを掛けずに儲かる商品を売りたい」と考えるのは、営利集団である以上は仕方がないことかもしれません。そのような「顧客に向いていない姿勢」を一消費者として応援できるかは別にして、「ボランティアではないのだからまあ理解はできる」というところでしょうか。

そして、保険販売の現場では、いわば「新契約至上主義」が蔓延しています。

この2点、「顧客に向いていない姿勢」と「新契約至上主義」が起因となり引き起こした一大事件があります。いわゆる「保険金不払い問題」です。

記憶に新しいことかと思いますが、2005年ごろから生命保険会社、損害保険会社において、保険金の不払いが多発するという社会問題がありました。金融庁は2005年から2006年の間に、不払いを理由として、4件の業務停止命令と、32件もの業務改善命令を出し、内部管理と支払管理態勢の整備を命じました。不払い自体は、ほぼすべての保険会社で見つかり、保険業界における販売・支払いに大きな問題があることが明るみになりました。

ちなみに不払いとは、このようなものを指します。

① 不適切な不払い
例:告知事項とは因果関係がない保険事故にもかかわらず、告知義務違反を理由に支払いを拒否していた
② 支払い漏れ
例:主契約の死亡保険金が払われたが、特約で付いていた特約給付金が払われるべきであったのに払われていなかった
③ 請求勧奨漏れ
例:入院給付金などの請求があったケースで、通院給付金の支払いが案内されていなかった

金融庁の指摘を受けて、各社はいっせいに膨大な労力を費やして、過去の契約全件を検証しました。検証の結果として、保険会社内の明確なルール化や管理・チェック体制が不十分であったこと、社員の商品知識不足や誤った認識があったこと、不適切な募集行為があったことなどを認めました。そして結果として、業界全体の動きとしてコンプライアンスを強化することを消費者に約束したのです。

余談ですが、わたしはこの事件の起こった2005年から2006年当時、前職のシステム会社で生損保会社の社内業務システムの提案活動に携わっていました。どちらかというと、新規システム投資を促すような提案活動が多かったように思います。しかしながら、不払い問題事件が発生してから、そのような提案は保険会社にまったく受け入れられなくなった時期がありました。

なぜかといえばこの時期に、保険会社の中で新規投資の案件はごっそり予算を削られしまったからです。投資の方向性が変わったのです。新しいことなんてやっている場合じゃない、まずはこれまでの特約を整理したり、約款や契約書類のリニューアル。それに支払い漏れを防ぐ監視システムを構築するなど再発防止策が先決だ………、一斉にそのような状況になったことをよく覚えています。

さて、この「保険金不払い問題」ですが、細かい事象のひとつひとつはさておき、
●保険金を払い渋ったこと(保険会社の問題)
●適切な保険募集を行なっていなかったこと(保険代理店・保険募集人の問題)

この2 点が大きな問題となりました。どういうことか、簡単にご説明します。

【保険金を払い渋ったこと】(保険会社の問題)
第1 章でも触れましたが、生命保険会社は1990年代にバブル崩壊後の金利低下によって、多額の逆ざやを抱えました。お客様に約束した利回りより運用利回りのほうが低いわけですから、当然マイナスです。ところがこの時期、保険会社の経費を大幅に下げられるかというと大きくは下げられません。ではどうするのか。この結果、利益を増やす手段として、支出である保険金を正当な事由であっても払い渋るという、保険の存在意義を自ら失わしめるような行為が起こるようになったのです。

【適切な保険募集を行なっていなかったこと】(保険代理店・保険募集人の問題)
保険代理店、保険募集人は、いつも新契約を取り付けることにノルマを設けられています。そのことに注力するあまり、顧客に対して正確な商品説明を行なわないなど、保障内容などを十分に理解しないまま顧客が契約するという事例や、ウソの説明をして不当に契約させてしまうといった事例などが存在しました。

その結果、契約者は請求可能な保険金の存在に気づかない、あるいは募集人に従って契約したのに、保険事故発生後の請求段階で保険金の支払いを拒否されるといった、契約者が保険金を手にできない状況を作り出す原因となったのです。

利益至上主義ここにきわまれり、といったところでしょうか。利益追求の姿勢が入口の販売の面だけでなく、出口にあたる支払いの面にまで影響して、保険が保険として機能しないという異常な状態を作り上げてしまったということが問題の本質なのです。今はこの反省を踏まえて、各保険会社は顧客保護の徹底などを打ち出して(少なくも公式ホームページなどではそのように表現されています)、相当コンプライアンスを強化しているように思えます。

しかし根本の部分で「新契約至上主義」が何か変わったかというと、あまり大きな変化は無いようです。

商品のメリットだけでなく、デメリットの部分や細部の特徴まできちんと消費者が納得できるまで話してくれる。そして仮に契約が成立しなくても文句を言わない。保険会社の代理人としてではなく、消費者の購買代理人として立ち振舞ってくれる、そんな保険代理店・保険募集人とだけお付き合いしたいものです。
 

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商品の価値より売る人の価値?

欲しい車があったとしたら、いったい何をするでしょう?

あなたが今から、新車でクルマを買うとしましょう。そのために、いったい何をするでしょうか。

セダンがほしいのか、ワンボックスがほしいのか。はたまた、ハイブリッド車がほしいのか。まずこのあたりを決めますよね。次にだいたいの車種を決めて、予算、年式、色、排気量などなど。買いたいクルマの詳細を絞り込んでいくのではないでしょうか。

この過程でやることは何でしょうか?

おそらくですが、今でしたらネットで情報を取りますよね。パンフレットなどの資料請求をして、そのあと実際に説明を聞きに販売店にも行くでしょう。複数の見積もりや試乗をするために、何件かを比較するということもほとんどの人はやると思います。

結果として条件に合うクルマが見つかって、そのクルマを買うことにしました。どういう要因で買うのでしょう?

条件として何が一番というのは買う人によって違うでしょうが、「そのクルマの商品価値が満足いくもので、予算にも収まるものだった」ということは共通して言えるのではないでしょうか。

クルマや家といった目に見えるものについては、誰でも多かれ少なかれ「こういうのがいい」という好みがあるでしょうし、イメージがわきやすいはずです。でも、保険は目に見えない商品ですから、ここが消費者にとって一番難しいところなのです。

ここまでさまざまな角度から生命保険について書いてきました。読者に理解してもらいたいことをひとことでいえば「保険もクルマと同じように、商品性主体で購入されるべき」ということなのです。場合によってはクルマよりはるかに高い買い物になるにも関わらず、「商品価値が満足いくものなのかどうかもわからないし、トータルでいくら掛かるものなのかもわからない」という状態で買ってしまう。そんな現状の保険購買のあり方は明らかにおかしいと考えています。

これは消費者側の意識の低さにも問題がありますが、今に至ってもメーカーである生命保険会社側がイメージ戦略主体で、単純な商品比較を避けてきたことが大きな原因だと思います。

「安心感」や「親しみやすさ」をアピールするCM

たとえば、ある保険会社のCMでは、必ずといっていいほど、朗らかで知的な、身だしなみのいい男性が出てきます。この男性が顧客と接しているところが流れるわけですが、たとえばCMが4種類あるとして、作りはこんなパターンです。

1番目に若い夫婦のライフプランの相談を聞いているところ。

2番目にこの夫婦に子どもが産まれたことをともに喜んでいるところ。

3番目に子どもの成長に一緒になって向き合っているところ。

最後に、夫との死別により未亡人となった妻の保険金請求手続きを手助けしているところ。

つまり、お客様のさまざまなライフステージの局面にスポットを当てて、消費者に「われわれはお客様の人生の伴走者です」というイメージを植えつけるようなCMです。これは専門職の男性営業マンによる販売が主力の会社の例ですが、いわゆる「生保レディ」による販売が中心の会社でも、あまり大差はありません。「安心感」や「親しみやすさ」をアピールするCMがほとんどです。商品の保障内容の充実さや、費用の安さなどを一番に売り込むCMはネット生保は別にして、例外でしょう。

こういったCM で端的にわかることは、つまり保険会社は商品の価値をセールスポイントにして売ろうとはしていないのです。もっとも、商品の説明をしてもしょせん消費者にはわからないだろうという判断もあるのかもしれません。もしそうだとしたら、かなり消費者をバカにした話しです。

他の高額商品を買うときに「信頼できる相手から買いたい」なんて普通の要求でしょう。むしろ、クルマのような高額な買い物だったら、「優秀で信頼できる営業マンからじゃないと買わない」という風に思いませんか。そこは自動車メーカーは当たり前だと思ってますから、日産自動車はCMで絶対に「セールスマンバリュー」を標榜したりしません。日産車ならではの「商品の価値」を売り込むわけです。ところが、生命保険のCMだと「商品の価値より売る人の価値」になるのです。実に不思議な現象です。「消費者にとって本当にいい商品(もちろん生命保険会社も利益が出せる)が分かりやすくたくさん売れる」というほうが、生命保険会社にとっても消費者にとっても有益な話であるはずです。そのためには、消費者が「いい商品」を知る機会が必要です。最終的には消費者が誰でも自分自身で、最適な生命保険を選べるような購買スタイルが普及するべきだと思います。生命保険の代理店業務に携わる人間として、これができれば本当に本望です。
 

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あなたも身に覚えがありませんか?

保険会社の本音は、「たくさん保険を買って欲しい」「新契約が欲しい」ということです。そして、売っている人もたくさん新契約が獲得できれば、成績アップなどに繋がります。これ自体は、何を売っていてもそうですが営利集団である以上、極めて普通のことだと思います。

生命保険会社には顧客に直販する営業マンだけではなく、代理店を担当する営業マンがいます。実は弊社にも「新商品やキャンペーンのお知らせ」ということでよくお見えになります。私が勤務しているのは22社の商品を取り扱う乗合代理店ですから、必然的にさまざまな商品のプレゼンテーションやご説明を受ける機会が多いわけです。

本来でしたら消費者のために最も役に立ちそうな商品だけをご案内いただければ一番よいのですが、問題は、なかにはとても顧客に勧めたいと思えないような商品も存在することです。そして、取り扱いが難しいのが、その営業マンは「恣意的にそういう商品を持ってきている」とは一概に言えないところです。

これも例を出して説明しておきます。

■ C保険会社 医療保険
月額保険料:4800円
40歳 男性 医療保険
保障期間:終身
払込期間:終身
掛け捨てタイプ
取り扱い:C 保険会社
入院一日あたり:1万円
手術を受けた場合(部位などにより):5万円、10万円、40万円
一入院限度日数:60日

入院したら1日1万円と、手術した場合に保険金が出るという、ごくオーソドックスな保障内容の医療保険です。だれでも一度はCMなどを目にしたことがある、超有名な生命保険会社の主力商品です。ちなみに、同じ保障内容(入院日額1万円)の医療保険で、他社の保険料はこんな感じです。

D保険会社=月額保険料 3980円
E保険会社=月額保険料 4210円
F保険会社=月額保険料 4280円
(中略)
X保険会社=月額保険料 5580円
Y保険会社=月額保険料 6290円
Z保険会社=月額保険料 7950円

同じ保障内容の商品でこれだけの違いがあるというだけでも驚きかと思いますが、費用面だけで考えて、月額が4800円というC社の保険料は相対的にそれほど割高なわけではありません。だいたい真ん中クラスの保険料ということができます。しかし、先ほどもお話ししましたが、消費者にこのような価格差があるという事前知識があったら、どういう選択をするかという点がまず大切なポイントです。

そして、次に「そもそもこの医療保険が必要なのか?」という点です。C社の医療保険の費用対効果を考えてみたいと思います。

4800円の保険料で、払込期間は終身です。つまり、契約を継続する限りずっと、最終的には一生涯払い込むタイプの医療保険です。話しをわかりやすくするために、期間を区切って
60歳までと考えてみます。40歳から60歳まで契約を続けるとすれば、4800円×12か月×20年=115万2000円を保険会社に支払う計算になります。この支払った金額を回収するために何日入院する必要があるでしょうか?

単純化するために手術は抜きにして考えると、20年間で実に116日以上の入院が必要になるという計算になります。前章で、日本には健康保険(3割負担)に加えて、高額療養費制度というものがあることに触れました。つまり、単純計算ですが20年間に116万円以上の(自己負担の)医療費が掛かった場合でないと、この保険の元は取れないということです。

実はこのタイプの保険は相当売れていますから、心当たりがある方はかなり多いのではと思います。しかし合理的に考えてみれば、かなり譲ったとしても100万円程度の余裕資金(貯金)がある人に、このような保険は不要と考えられると思います。

どうしても必要な方は、急な医療費の出費に耐えられない方、もしくは「お金は無駄になっても安心していたい」という心配性な方に限られるでしょう。(仮に必要性があったとしても、C社よりD社が安値ですが)

さて、今までの話を前提に、あなたがC社の経営者でたくさんこの医療保険を売りたいと考えたとしましょう。どうしますか?

考えられる手段を挙げてみましょう。
① かわいらしいキャラクターや有名な俳優などを活用したCMで、とにかく認知度を上げる
② セールスパーソンへの手数料、コミッションなどを上げて、たくさん売らせる
③ ダイレクトセールスの比重を上げる(できるだけ消費者に比較をさせない)
④ 「もしものときに備えられる保険」という保障内容を強くアピールする
  (こんなに医療費が掛かる場合があります!などというキャッチコピーで消費者の不安を煽る)
⑤ 「安心のX生命!私たちにお任せ下さい」という安心感を強調する
⑥ 「月々、わずか4800円」と安さで売り込む(実は他社のほうが安かったりしますが……)

ざっとこんな感じでしょうか。

そして、実際にこのような手段が取られているわけです。もっとも、C 社の立場からしたら他社のほうが安かろうが自社の商品を売ることのほうが大切なのですから、当たり前のセールスでしょう。しかし消費者の立場からみたときに大切なことは、このような実態を本当に理解したうえで、必要性を判断できているかどうか、ということにほかならないのです。
 

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代理店の事情

あらためて私の経歴をご説明いたします

今回は、あらためて私の置かれている立場、経歴をご説明します。私は現在、22社の生命保険会社の商品を扱う、「乗合代理店」に勤務しています。

新卒から10年間はまったく異業種のシステム業界で金融機関向けのセールスをしていて、前職では銀行や保険会社向けの企業システム構築案件のような、数千万円から数億円といった単位のお金が動くプロジェクトに関わっていました。そういったプロジェクトのセールス現場では、IBMや日立、NECといった大手企業との案件の獲得合戦があるのが当たり前で、過去の類似システム構築の実績や技術力、企業の信頼性など、さまざまな観点から厳しく提案をチェックされたものでした。

そういった環境で10年間、仕事を基礎から叩き込まれてきた人間ですから、「お客様は厳しい目で提案を比較するのが当たり前」という感覚をもっているわけです。その一方、生命保険業界に入ってからはまだ2年ですから「生命保険を扱う人間の中ではまだまだキャリアは浅い」ことは否めない事実です。そのかわりに、「いくら業界の常識だろうが、おかしいものはおかしい」という、染まっていない感覚をまだもっているつもりです。

さて、そんな人間が今の保険屋の立場になってみてわかったことなのですが、保険業界の営業をしていると、販売の観点から特殊な事情がいくつもあるのです。セールスレディやライフプランナーなど、おそらく会社や立場によって異なる事情があるかと思いますが、ここではあくまでわたしの勤務する「乗合代理店」の立場で、特殊と思われる生命保険販売の実態をご紹介します。

【生保会社のノルマ】
まず、弊社は22社の生命保険会社の商品を取り扱うことができる「乗合代理店」と書きましたが、これらの会社の商品を取り扱うためのノルマがあります。ハードルは各社さまざまですが、たとえば「年X件売ること」、「年間保険料換算でX円以上売ること」、「A商品を年X件、B商品をX件売ること」などがあります。だいたい件数か売り上げか、もしくはその両方が達成条件となります。

【代理店ランク】
最低限のノルマを達成したら、次はランクです。たくさん売れば売るほど、手数料率があがります。たとえばお客様がある保険に加入して100万円の保険料を払われたとします。等級のいちばん低い3級の代理店だと5%で5万円、その次の2級の代理店だと10%で10万円、のようなイメージです。この手数料が代理店の主たる収入源となりますから、代理店側にしてみたらランクの維持、向上は最も大切な数字のひとつです。このランクの基準は各保険会社ごとによってまったく異なります。

【手数料】
一般的に、掛け捨ての商品ほど手数料は高く、貯蓄性の商品であるほど手数料は低いです。また、仮に代理店ランクが最低の会社と最高の会社でしたら、まったく同じ人に同じ保障内容の商品を売った場合でも、A代理店だったら5%だけど、B代理店には50%が支払われる、というようなことが起こり得ます。

【継続率】
契約が成立したお客様が解約することなく継続する率のことです。生命保険というのは売り手の立場でいうと「短期解約は悪」で、規定月数未満の解約にはペナルティーがあるのです。このペナルティーは会社によってさまざまですが、代理店には基本的に13か月以内の解約にはかなり重いペナルティが掛かります。

【ボーナス】
「1年以内にA商品をX件売ったら、手数料率を5%上乗せる」「4半期ごとにX万円支払う」のようなものです。キャンペーンという名目で、ある目標を達成したら生命保険会社からボーナスが払われるという場合もあります。

【特別表彰】
「保険会社規定の数値を達成したら、ご家族とともにディズニーランド貸切ツアーに招待」というようなものです。景気のいい時代には沖縄やハワイなどで盛大に行われたケースも多々あったようです。もっとも、私には縁の無い時代のことですが。

ざっと挙げただけでも、このような販売慣習があります。離職率の高い代理店ですと、代理店独自のノルマで新入社員勧誘数や獲得数などが課せられる場合もあるようです。この新入社員勧誘ノルマは、セールスレディの立場でも同様と聞きます。

これらが生命保険会社からわれわれ乗合代理店に課されているルールの一例です。お気づきになったかもしれませんが、全て「新たな保険契約を獲得すること」が目的になっていることがわかります。たとえ誰よりも「お客様のご意向にすばやく対応する」「保険金を確実にお支払いする」といったことを熱心にやったとしても、契約者から感謝はされたとしても、保険会社からビタ一文も出ることは無いのです。

ここに、買い手と売り手の大きな意識の乖離があります。買い手からすると生命保険契約でいちばん大切なことは、「万一の際に保障が受けられること=保険金の納品」。貯蓄性の高い商品であれば「解約時にきちんと返戻金が払われること」などでしょう。ところが、売り手にとっていちばん大切なことは、「最も利幅が大きい商品に加入してくれるかどうか」ということです。

極端なことは起こらなくても、上司から「来週中にあと1件、何とかこの商品を売らなければボーナスが無くなるから何とかしろ」と指示されたら、部下であれば「何とかしなければ」と思うでしょう。ニーズがぴったりあう顧客がたまたま見つかれば話しは別ですが、往々にしてそうはなりません。こういった業界慣習に「買い手が求めていない商品を買わされる」ことが起こる背景があるように感じます。
 

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多様化する販売経路

生命保険販売形態

生命保険を販売するためには、「生命保険募集人」という資格を取らなければいけません。この資格を取るには、生命保険協会の「一般課程試験」に合格し、金融監督庁長官に登録申請し、受理されることが必要です。と書くとなんだか難しそうですが、受験者には予め生命保険会社がとても手厚い研修を実施しますので、不合格になる人はごく稀です。

ここからは、生命保険の売り手の事情をお話ししたいと思います。人からすすめられて買うことが多い生命保険は、売り手の事情が結果として消費者に大きな影響を及ぼすことが非常に多いからです。

さて、今現在、日本国内には生命保険募集人の資格を持っている人は何十万人といますが、生命保険を販売しているチャネルは代表的なところで以下のような販売形態があります。

① 従来型のセールスレディ
② 外資系生保などのライフプランナー
③ 乗合代理店
④ 来店型の保険ショップ
⑤ 銀行、証券会社などの窓口販売
⑥ ネット通販

ここでごく簡単に、生命保険販売の形態が多様化してきた推移をご説明します。

生命保険販売は長きにわたり、①従来型のセールスレディに『お勧めされて(仕方なく)入るもの』でした。お昼休みにもなれば各職場にセールスレディが派遣され、アメや雑誌などを配り、すこし顔見知りになってから「あなたにピッタリの保険があります」とセールスをして、契約に結び付けるやり方です。私が新卒で社会に入った10年ほど前は、まだこういった販売チャネルが圧倒的に多数派で、同僚の中にはしつこいセールスが嫌で、仕方なく保険に入る人も少なくありませんでした。

それに続く勢力は、②外資系生保のライフプランナーです。たいていの場合は他業種でトップセラーだったスマートな男性をヘッドハンティングして採用するやり方で、従来の生命保険販売の問題点を指摘することで不満を呼び起こし、必要な保障から保険選びまでを理論的に説明。時には感情にも訴え、生命保険は最も大切なものという価値観を消費者に伝えて契約に結び付ける手法で、浸透していきました。

複数の保険会社の商品から消費者にあったものを組み合わせて選ぶという新しい販売手法

生命保険は自分で考えて入るもの。そんな価値観が浸透し始めた時、金融自由化の流れもあって登場したのが、複数の保険会社を取り扱う③乗合代理店です。それまで販売手法の違いはあれど、セールスパーソンは自社の商品のみをお勧めする構図でしたが、乗合代理店は、複数の保険会社の商品から消費者にあったものを組み合わせて選ぶという新しい販売手法を展開するようになりました。ちなみに著者の私は、この乗合代理店に勤務しています。

さらに、④来店型の保険ショップは、従来の訪問ありきの販売スタイルをやめて店舗を構え、必要な時に来店して生命保険の相談をする形を浸透させました。

そして2001年4月から⑤銀行、証券会社などの窓口販売が段階的に解禁になりました。2007年4月からは、全面的に解禁されています。メガバンクなどでは、保険だけでなく資産運用や住宅ローンなどをワンストップで相談できる体制を整備しています。

また、その一方で⑥ネット通販も徐々に浸透しています。ネット生保の強みは何と言ってもその安さです。一部のネット生保は保険料の内訳まで公開し、CMなどメディアを通じ情報の透明性と価格の合理性をPRしています。

このような販売形態の多様化は、消費者の立場からすると選択肢が広がったという意味では間違いなく「いいこと」でしょう。

しかし残念なことに、現実は必ずしも消費者にとっていいことばかりではないのです。全体的には販売チャネルは多様化されてきているといいながらも、個別にはやはり売り手の都合が優先される場合がたくさんあるからです。

誤解のないように言いますが、多くのセールスパーソンは「お客様のために最善の提案、行動をする」ことに真摯な方が圧倒的に多いことと思います。それなのに、なぜ消費者のためにならない状況が生まれるのか。この背景を理解するためには、売り手の置かれている立場・事情を理解することを避けて通ることができません。最終的には、それが自己の加入した保険の満足度に大いに繋がる可能性があるのです。

 

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保険会社も営利企業

厚生労働省が毎年発表している『生命表』

突然ですが、わたしは大のプロ野球ファンで、例年5月ごろに始まるセ・リーグとパ・リーグの「交流戦」を毎年本当に楽しみにしています。初夏のさわやかな天候のなか、スタジアムで観戦するプロ野球は、いつ行っても最高に気持ちよいものです。

さてこの「交流戦」、正式名称は『日本生命 セ・パ交流戦』と言います。ご存知のとおり、民間生命保険会社のなかで「かんぽ生命」に次ぐ大手企業が「日本生命」です。その日本生命がプロ野球 セ・パ交流戦の特別協賛スポンサーとなっています。なぜ生命保険会社が、プロ野球の試合のスポンサーになっているのでしょうか。

もうひとつ、考えてみていただきたいことがあります。それは「なぜ生命保険会社は駅前などの一等地に自社ビルを構えることができるのか?」ということです。

生命保険会社が、スポーツイベントのスポンサーをしたり、駅前の一等地に自社ビルを構えたりすることができるのはなぜでしょうか。

厚生労働省が毎年発表している『生命表』の中に、その答えが隠されているように思えます。

生命表とは、「各年齢の者が1年以内に死亡する確率や平均してあと何年生きられるかという期待値などを死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したもの」で、厚生労働省のホームページなどでも紹介されています。

2012年5月末に発表されたデータによると、今0歳の男児10万人が60歳になった時の生存者数は、9万1308人です。9割以上の人は、無事還暦を迎えられることになります。さらに、6割近い5万8902人もの人々は、80歳になっても生存していることになります。医療技術の進歩などから、日本人の平均寿命は毎年伸びている傾向にあることは明らかです。

▼「厚生労働省 生命表」
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/21th/index.html

つまり、不幸にも「何らかのリスク」に遭遇して命を落としてしまう人は、普段私たちが想像している以上に少ないということです。確率的には決して高いとはいえないリスクに備えて、私たちは「人生で住宅の次に高い買い物」と言われる生命保険に入っているわけです。

あらゆる保険商品は、保険会社にとって利益が出る設計である

もっとも、法人の社長や世帯主などのキーマンでしたら、いくら可能性はわずかといえども万一のことがあった際には会社もしくは家計がたいへんな危機を迎えるわけですから、生命保険とまったく無縁の人生を送れる方は、むしろ少数派かと思います。

ここまで書いたらもうおわかりになられたかもしれませんが、あらゆる保険商品は、保険会社にとって利益が出るように設計されています。

一部の保険会社を除き、保険会社は保険料に占める経費率を公表していませんが、だいたい20%〜40%ほどといわれています。商品によっては50%以上もの経費率になっている場合も実はあります。

想像して欲しいのですが、もし銀行の預金に掛かる引き出し手数料が50%だったとしたら、あなたはお金を預けますか? 普通預金と生命保険を単純比較することはできないと思いますが、保険会社の経費率はかなり高いと言わざるをえません。

また保険商品の中には、貯蓄性がある商品が存在します。でも、一般的にこれらの商品は保険会社の中ではあまり積極的に販売されていない場合が多くあります。貯蓄性がある商品は、保険会社の中での手数料が低く設定されていたり、成績にあまり高くカウントされない場合が多いのです。

わかりやすいところでは、学資保険という保険があります。お子様の将来の学資資金を貯めるために、元本割れしない学資保険を検討された方もいらっしゃると思います。この商品に年間10万円の保険料を払うとします。保険代理店に勤務する募集人がこの保険の新規契約をお預かりしたとして、募集人の手元に入ってくる手数料はわずか数百円程度です。

結局、「いつか必ず返すお金」を預かる契約は、保険会社にとって利益率が高いとはいえない商品です。

逆に、「今から10年の間に万が一のことがあった時に5000万円を支払う」というような保険は、もしそういう事態にならなければ保険会社はまるまる収益になります。そして死亡保障性の商品でしたら、前述のとおり「万が一の場合」というのはめったに起きないのです。データ上、男性であれば90%以上の方が60歳まで生きるのですから。

保険という仕組みは元来、「相互扶助」つまり「助け合い」で成り立っています。「自分の払い込んだ保険料が他の多くの人を助けるために使われ、自分が助けられるときには、他の人が払い込んだものが使われる」ということです。生命保険が最悪の事態に備えるためのすばらしい仕組みであることは確かなのですが、保険会社は営利企業です。営利企業である限りは、利益を生みださなくてはいけません。

生命保険は大変高額な買い物です。このような販売の現状がある、ということを理解されたうえで、本当に必要なものだけ加入を検討されることをオススメします。

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裏付けデータの信ぴょう性

2人に1人はがんになる時代……。みなさんは、そんなフレーズを聞いたことはありませんか?

人により部位は異なりますが、毎年のように芸能人や著名人が相次いでがんになったり、がんを原因として亡くなっています。
50代の男性歌手だけをとってみても、2年前にはサザンオールスターズの桑田佳祐さんが食道ガンを発症されましたし、3年前にはロックスターの忌野清志郎さんがガン性リンパ管症という病気で亡くなりました。そのようなニュースが報道されるたび、我が家もがん家系だし、ひとごとじゃない……、そう感じられる方も多いのではないでしょうか。

「2人に1人はがんになる時代」はほんと?

わが国は日本人男性の平均寿命が79歳、女性にいたっては86歳という世界屈指の長寿国家です。そのことから、いまや50代はこの時代、まだまだ家計を担う働き盛りの年代と言えるでしょう。そのような年代で、がんになってしまうリスク。その対策として、保険の世界には「がん保険」という商品があります。多くの保険会社がラインナップする、主力級といえる商品のひとつです。

その「がん保険」のパンフレットなどで登場するフレーズが、冒頭の「2人に1人はがんになる時代」というわけです。果たして本当にそうなのか?そして、結論として保険が必要、となるのかどうか?

ここでは、「がん保険の必要性」および「裏づけデータ」について検証してみたいと思います。

「2人に1人はがんになる時代」というのはウソでもなんでもなく、統計に基づく事実です。国立がん研究センターがまとめた「がんの統計(2011年度)」によると、
●男性の54・9%、女性の41・6%はがんになる
●男性の26・1%、女性の15・9%はがんにより死亡する
ことが明記されています。

たしかに高い数値です。でも、年齢別のがん罹患リスクやがんによる死亡リスクをグラフにすると、また別の見方をすることができます。

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いかがですか。年齢層別のグラフにするとよくわかるのですが、がんはいわば「老人病」。加齢によって罹患リスク、死亡リスクが高まる病気であることが、統計データを見るとよく分かります。

たしかに、生涯でいえば「ほぼ2人に1人ががんになる」ということは言えますが、59歳までにがんになる方の割合を見ると、男性で7・5%、女性で9・8%に過ぎないのです。

そもそも万一に備えるのが生命保険


次に「長期の治療が必要となったときにどれくらいの自己負担が必要となるのか?」を考えてみましょう。健康保険の区分が一般の方(月額の額面報酬が51万5000円未満)ががんになって、長期治療をした場合について計算してみます。

1 か月あたり100万円の治療費が掛かったとすると、健康保険で3割負担ですから30万円となります。それに加えて、前述した高額療養費制度が使えます。

この場合の計算式は、8万100円+(総医療費マイナス26万7000円)× 1%(1年に4回目以上の場合は限度額4万4000円)となります。

ということは、8万100円+(100万円マイナス26万7000円)× 1%= 8万7430円。

この金額が、実際の1か月の自己負担限度額となります。また、1年間に高額療養費制度が4回該当する場合が続くと、1か月の負担は4万4400円で済みます。

つまり、治療費100万円が12か月続いた場合。
1〜3か月目まで
3×8万7430円=26万2290円
4〜12か月目まで
9×4万4400円=39万9600円

1年間の合計は66万1890円となります。さらに治療が続いた場合、2年目以後は12×4万4400円=53万2800円。これが、高額療養費制度をフル活用した場合の計算になります。

がん治療には法外な費用が掛かる、と思われている方も多いものと思われますが、公的保険が適用される場合だと、これだけの自己負担で済みます。

ただし、忘れてはならないのは必要なのは治療費だけではないということです。ここまでの費用は長期の治療に掛かる費用ですが、一般的にはこれだけの長期治療になると、収入が途切れる、または減少するということになるでしょう。治療の間の生活費、教育費なども手当てしておく必要があります。

また、何年分の治療費を考えるのかということも頭にいれておく必要がありますし、治療によっては公的保険の範囲外(先進医療といいます)の費用が必要になる場合もあります。稀なケースではありますが、特に高額な先進医療を受ける場合だと40日程度の入院で300万円以上の保険のきかない治療費が発生するケースも存在します。

このような経済的な負担に備えるために、真っ先に考えるべきは「貯蓄」でしょう。実は、前述の高額療養費制度は、基本的にあとから還付される形式をとっているため、自治体などに事前申請をしていたケースを除いては、還付は3か月後ぐらいになります。ということは、前述の例だと100万円×3割負担×3か月=90万円は身銭を切って支払う必要があるのです。

次の手段として、がんと確定診断されたときに給付金が出たり、入院給付金や手術給付金などが出る「がん保険」が考えられます。がんと確定診断されたらすぐに100万円が支払われる、という保障内容のものや、高額な先進医療を受ける場合に500万円〜2000万円くらいまでを保障する(先進医療特約といいます)、というものなどがあります。500万円以上もの治療費が掛かるケースはまさに万一の事態でしょうが、そもそも万一に備えるのが生命保険であると考えるならば、これは一考する価値があるでしょう。

がん保険

ではがん保険に加入する場合には、総額でいったいいくら掛かるのか。これも実例を挙げます。

40歳男性
がん診断一時金:100万円
入院給付金:1万円
保険期間:終身
払込期間:60歳まで
月額保険料:5980円
累計保険料:133万5200円

この商品は、経済誌の保険特集などでも、よくプロがオススメする保険ランキングの上位に紹介されるがん保険です。保険期間は終身有効ですから、133万円払えば一生涯のがん対策は一応できると言えます。あとは、この保険料を高いと思うか、それとも安心のために買っておくと考えるかといった判断です。貯蓄があるから不要、という判断ももちろんありです。ここまで考えて、初めて保険の必要性が検討できるといえると思います。

がんになるのが2人に1人というフレーズはたしかに統計で裏付けられている事実です。しかし統計データからの引用は断片的な情報にすぎません。安易にキャッチコピーに踊らされず、がん罹患のリスクは実際どれくらいあって、費用はいくら掛かるのか。そしてその費用は自分で用意できるのか。できないのならば保険を検討すべきですが、その保険はいくら掛かってどのような保障内容のものが望ましいのか。このような順番で必要性を考えていけば、キャッチコピーに惑わされずに、ご自身にとって
本当に必要なリスク対策ができるのではないでしょうか。

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